シミュレーションの今昔、未来を変えるスパコン「京」:CAEベンダー MSCが50周年(1/2 ページ)
「京を使って、風洞実験の代わり」ではなく、「風洞では不可能な検証」すなわち「風洞では到底再現できない、リアルな実機走行に極めて近いシミュレーションを実現する。2013年5月30日開催「MSC Software 2013 Users Conference」講演より。
MSC.Software(以下、MSC)の日本法人であるエムエスシーソフトウェアは、2013年5月30日、「MSC Software 2013 Users Conference」を都内で開催した。MSCは2013年で創立50周年を迎え、それを記念するイベントとなった。
午前中の基調講演には、日本自動車研究所 代表理事 研究所長 小林敏雄氏が登壇。HPCやCFDがたどってきた歴史や、同氏が関わってきた「CFD技術部門委員会のCFDベンチマーク」の取り組みを紹介した。
講演では、小林氏が産学連携プロジェクトの一環で取り組む、スーパーコンピュータ(スパコン)「京」を使った車両空力解析を紹介。要素数は23億で、非構造格子を使い複雑な車体形状を再現し、非定常解析を実施している。23億もの格子をマニュアルで作成するのは不可能なので、独自にプログラム開発し自動で行うという。「次世代の空力シミュレーションは『風洞実験の代わり」』ではなく、『風洞では不可能な検証』すなわち『風洞では到底再現できない、リアルな実機走行に極めて近いシミュレーション』を実施するためのものにシフトしていく」と小林氏は話した。
同プロジェクトにより、民間企業の自動車開発における試作・実験を大幅に減らし、開発費の削減を目指す。また、京を利用したシミュレーションで、新たに知見が得られたり、製品の性能や品質を飛躍的に向上させられるとしている。スパコンを利用する企業を増やし、計算機やソフトウェアの市場拡大を狙い、それにより日本産業全体の競争力を強化したいとのことだ。
自動車業界における計算力学の先端研究では、交通事故死傷者を半減させるためにシミュレーションが生かせないかと議論されているという。工学と医学が連携し、データベースを作り、それを基盤研究に生かす。そのシステムで、事故をバーチャルに再現して、人体や臓器が損傷してしまう原因や現象を解明しようとしている。
小林氏が取り組む産学連携プロジェクトでは、先端研究と民間企業の実用開発の間のギャップを縮めていきたいという。
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