造林作業向けアシストスーツと“後ろから乗る”電動車いす、国際ロボット展で披露:2017国際ロボット展(2/2 ページ)
NEDOは「2017 国際ロボット展(iREX2017)」に出展し、林業用アシストスーツの試作品「TABITO-03」や、新型電動車いす型ロボット「RODEM(ロデム)」などを展示する。
後ろから乗る車イス「RODEM」
NEDOから助成を受ける、ロボット開発企業のテムザックは、NEDOブースの「サービス」で新型電動車いす型ロボット(ライドドロイド)であるRODEMを展示する。同製品は2017年11月20日より販売受付を開始している。販売価格は98万円(税、送料、調整費は別)で、商社のCBCを経由して販売する。製品販売の他に、レンタルサービスなどにより月間5000〜1万円程度で利用できるように考えているという。同製品は室内乗り専用で、5色のカラーバリエーションがある。
従来、前から乗るものであった車イスを、後ろから乗るものとして開発したのがRODEMだ。「身体の不自由な人にとっては、天と地の差を感じるほど乗りやすい」とテムザックのCEO(最高経営責任者)である高本陽一氏は説明する。これまでありそうなコンセプトのようにも見えるが、既存の他社製品や特許を探っても、類似のものは見られなかった高本氏は説明する。
後ろから乗車できることで、ベッドやいすからの乗り移りがスムーズにできる。座面の高さコントロールも可能だ。遠隔にRODEMがある場合には、スマートフォンのAndroidアプリ(iOSは順次対応予定)を使って遠隔操作して呼び寄せることが可能だ。室内で旋回しやすく作られており、食事や洗顔といったシーンにおいては前傾姿勢を取りやすくしている。また、自力で乗り移りや移動がしやすいことから、介護にあたる人の数や時間も減らせる可能性がある。
従来の車いすは座っているが故に、立っている人よりも目線が非常に低くなってしまう。人に見下ろされている感覚は、当人にとってはあまり気持ち良いとはいえない。RODEMは目線が高く、立っている人と目線の高さを合わせられることも注目の利点として挙げる。
テムザックは2009年から、後ろ乗り電動車いすの開発に着手。2014年11月には、NEDOやNTTドコモと共に、福祉先進国といわれるデンマークに渡り、介護・福祉施設、高齢者住宅、リハビリセンターで実証実験を実施。欧州委員会(EU)の基準適合マーク「CEマーキング」も取得した。
日本のJIS(日本工業規格)規格においては、「前から座るもので、後ろから乗るものではない」ということで、車いすとしての認証が受けられなかったことや、日本においてはロボットの安全性を確立しないと試乗してはならないという風潮があったことから、テムザックはデンマークを開発拠点として選んでいる。
RODEMがCEマーク認証を受けたことで日本工業標準調査会が動き、馬乗り型車いす」という規格を新たに制定する。これは海外ではまだ存在しない規格である。RODEMの販売を通じて、「日本発の規格」を世界に向けて広めていきたいとのことだ。
将来は、RODEMの充電センターの位置をクラウドの情報から探索し、無人の自動運転で戻る機能や、ユーザーのバイタルデータを吸い上げて管理したり、公共交通機関の乗り物として運用したりといったことも想定しているという。
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