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AIで金型加工を自動制御、熟練工のノウハウを注入し加工時間を40%削減スマートファクトリー(2/3 ページ)

オムロンは、製造現場の知能化を進めるIoT基盤「i-BELT」の実証事例として、草津工場の金型加工工程と、綾部工場の近接スイッチモジュール組み立て工程での成果について紹介した。

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工具の摩耗量は20%、加工時間は40%削減

 実証では、加工用の治具に振動センサーを取り付け、振動データをオムロンのPLCである「NJコントローラー」に取り込む。その振動データの特徴量を分析し、加工条件が厳しすぎる時や工具摩耗の予兆を検知すると、NJコントローラーが加工条件を最適化するという仕組みである。

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金型を固定する治具に微小な加工抵抗を見える化する振動センサーを設置(赤丸部分)(クリックで拡大)

 振動センサーからのデータ取得は3秒に1回、制御プログラムの更新は10秒に1回行う仕組みで、自動制御を実施。最適な加工ができている場合は、振動の幅は一定に保たれるはずだが、工具の摩耗などで条件が変わってくると振り幅が大きくなってくる。この変化を、単純に閾値を設定するのではなく、グラフの特徴量を抽出することで異常を発見し、最適化する。そのため、学習や再設定は必要になるものの、基本的な仕組みとしては、他の製造装置や他の製品分野にも活用可能だとしている。

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金型加工の振動データの監視画面。最適な振動とワークの送りスピードが実現しできれば一定となるが、実際には波がある。これを最適に制御することが重要だ(クリックで拡大)

 その結果、工具の摩耗量を20%削減することに成功。さらに常に工具などを最適に動作させられるので、加工時間を40%削減することにも成功したという。また、工具の状況を常に把握できるため、交換のタイミングについても約2倍に伸ばすことができるようになったという。これは、従来工具の交換は時間などを設定して交換していたが、長く使用しても問題ないことがデータから把握できるために実現できたことだとしている。

 成果としては非常に大きいものの「ここまで来るのは簡単ではなかった」というのが担当者の声だ。

 「検討開始から約2年がかかった。最初はマシニングセンタのコントローラーから情報を取ろうとしたが、古い機械だったこともあり、取れなかった。その後は電流値で情報を取得しようとしたが微小な変化を明示化するようなデータが取得できず、その後、振動を活用しようということになった。振動もどこから取ればよいのかをさまざま検討して、成果の出る形となった」と担当者は苦労について述べている。今後はさらに実証のバリエーションを増やしていく方針である。

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