ARは市場のゲームチェンジャー、日本市場は成長性に懸念:VRニュース(2/2 ページ)
AR/VR市場全体としては現在はVR機器がけん引。AR機器の市場規模としては数百万台が見込まれ、今後の5年間で急速な拡大が期待できる分野でもあるという。日本におけるAR/VR市場の成長率は世界と比べると見劣りする。日本ではAR/VRの市場を大きく広げるにあたり、教育分野をどう伸ばしていくかも重要な課題。
ゲームチェンジャーのAR
リース氏は、ARヘッドセットが「ゲームチェンジャー的存在」だと説明する。
米国におけるIT採用決定者はARに対する興味が非常に強いという同社調査の結果が出ているという。
「あなたの企業ではスマートフォンやタブレット端末、PCでのARを試用、あるいは使用していますか」という問いには、30%近くが「はい」と回答している。また「ARの利用を考えたとき、あなたがこの技術に興味を持つ理由として考えられるものは?」という問いについては、「効率向上」「ハンズフリー作業」「安全性の向上」といった項目を多くの回答者が挙げているという。
スタンドアロン型機器は2017年第2四半期全体の85%を占める。現在の参入企業は10社ほどで、今後もさらに増加すると同社は予想する。またAR機器はビジネス用途が全体の92%を占めており、今後もAR市場をけん引していくという。コンシューマー向けAR市場はモバイルARがけん引し、ケーブル付きARグラスの登場も予想できる。
AR HMD(※2)のトップシェアはマイクロソフト、2位がセイコーエプソン(エプソン)、3位がODGとなっている。OSはAndroidが多くを占める。エプソンはドローンにおける一人称視点ビューで、コンシューマー市場への展開を図りはじめている。
AR/VR市場全体としては現在はVR機器がけん引しており「AR機器の急成長は時宣を待たなければならない」(リース氏)というが、AR機器の市場規模としては数百万台が見込まれ、今後の5年間で急速な拡大が期待できる分野でもあると同氏は説明する。将来、市場へのインパクトはVR機器よりも強くなることが予想できるという。
AR機器の課題としては、IDCは以下を挙げる。
- 光学上の製造難易度が高い
- 手や視線のトラッキング技術の向上がカギ
- ネットワークなどバックエンド投資が必要
- 性能と可搬性のジレンマ(小型化と性能向上、バッテリー容量などのトレードオフ)
IDCでは将来、ARとVRは融合の方向に向かうとし、AR機器はVRの機能を併せ持つようになると予想。HMDもグラス型へと進化していくと見ている。
日本市場におけるAR/VR、成長性に懸念
「日本のAR/VR市場の成長性は世界と比べて若干見劣りする」とIDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストの菅原啓氏は説明する。
日本におけるVR機器市場はコンシューマー向けがけん引し、ARはビジネス利用が大半であり一定の成長性を見せるものの、世界と比べて伸び悩みが見られる。日本国内における、2017年のVR機器の市場規模は世界の2.6%程度で、2021年には1.6%まで後退するとIDCでは予測する。同じく、AR機器市場については、世界の4.9%で、2021年には0.4%にまで後退し、今後の成長性への懸念が見られる。日本のHMD出荷数は「クリスマス商戦」の影響が大きい。2017年下半期の伸びが期待できるとしている。
VR機器市場については世界と日本とで大きな違いが見られる。世界ではスクリーンレス型がけん引する一方で、日本ではケーブル型がイニチアチブを握る傾向である。
AR機器市場は世界全体でもまだ小さい現状だ。世界市場においては2016年からケーブル型の成長が少し見られているが、日本市場においては、ほぼスタンドアロン型のみで成長している。今後は、技術の進化に伴い課題が解消されていくことで、市場の成長が見込まれるという。
日本企業において、AR/VRのビジネス利用の意向は低い傾向だ。金融や建設土木でやや意向高めだが、他分野は低調である。
建設分野は市場が既に形成されつつあり、成長性が限定的であると見込む。医療分野においては、「ヘルスケアやリハビリなどでの使用拡大が予想でき、一定の成長が期待できる」と菅原氏は説明する。また「VR経験者」の裾野拡大のカギを握る、教育分野は15.1%と成長率が低く、支出規模も世界と比べて小さい傾向だ。日本ではAR/VRの市場を大きく広げるにあたり、教育分野をどう伸ばしていくかが重要な課題となるという。
他分野のIT導入の同社調査でも、日本における新しい技術分野への対応の遅さは表れており、AR/VRにおいても同様の傾向が出ているという。菅原氏は「このような結果は日本の文化的な問題も確かに影響している」と説明した。
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