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中小企業でIoTするなら、改善ネタを探しなさいIoT時代の中小企業モノづくり(1)(2/3 ページ)

「明るく楽しいモノづくり」を提唱するコンサルタント関伸一氏が考える、中小企業ならではのIoTのやり方とは? 第1回は、二極化している中小企業のIoTへの取り組みと、IoTネタの探し方について考えてみる。

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モノづくりの目的と手段

 ここで一度原点に戻り、モノづくりの目的と手段を確認しておこう。筆者の考えではあるが、モノづくりの目的はただ1つ、「製品を通じてお客さまを豊かにし、その結果社会貢献すること」だ。その目的を実現するための手段は「何を、どう作って、どう売るか」だが、「何を作る」だけ考えても無限にあるので、手段自体は無限にあると言っていい(図3)。


図3:モノづくりの目的と手段について

 少し前の話になるが、筆者があるセミナーで一人完結セル生産の話をした時のことだ(関連記事:明るく楽しい職場からしか良い物は生まれない)。「作業者さんには作業時間の早い遅いは意識させない、作業者さんからのリアルタイムデータで工場全体の進捗状況を管理すればいい(今思うとIoTとビッグデータの世界だ)。製造現場は明るく楽しくあるべきだ」という趣旨のことを話した後に、懇親会の席で筆者よりかなり年上のコンサルタントの方に、「作業者に時間を意識させないだって? あんたの考え方間違ってるよ」と面と向かって言われた。たぶん長年ストップウォッチを片手にタクトタイムだ、標準時間だと頑張ってこられたのだろう。

「モノづくりの目的は1つですが、手段は無限にあります。考え方が間違っているというのは失礼じゃありませんか?」と答えた。

 すると彼は

「現場は辛くて当たり前、明るく楽しい現場なんて理想論だよ」

と切り返してきたので、

「はい、理想ですよ。でも改善って理想と現実のギャップを埋めるための活動ですよね?理想を描かなければ改善は止まりますが、それでよろしいとお考えですか?」

 彼は黙って筆者の前から姿を消した。

 つい先日もこんなことがあった。本サイトでも度々取り上げられているオートデスクの「Fusion 360」は十分なCAD/CAM/CAE機能、破壊的価格で中小企業の福音的3Dツールだといえる。筆者も今、中小企業に合ったツールと位置付け、その普及活動に協力させていただいているのだが、静岡県内の某役所にFusion 360紹介セミナーの後援をお願いしに行った時のことだ。

 担当窓口の方に概要を伝えると、

「少しお待ちください、専門家を呼びます」

 現れたのはやはり筆者より年上、技術相談員の肩書を持った方だった。

「新しい3D CAD? ダメだよそんなの、データ互換できないでしょ?」

「お言葉ですが、3D CADのデータ互換の問題は10年以上前からほぼ解決されています。このFusion 360だって他のさまざまな3D CADから問題なくデータインポート可能ですよ」

 彼の頭の中は十数年前で止まってしまっている。静岡県内の自動車メーカー(と言ったら1社しかないが、笑)のOBだった。老害とは言いたくないが、技術相談員ともなれば最新の技術動向・情報はつかんでおかなければならない。相談する側だって彼の十数年前までの経験・知見でアドバイスされてはたまらないだろう。筆者は2018年で還暦を迎えるが、MONOistをはじめとするネットやメルマガ、日々のモノづくり仲間との情報交換で完璧ではないものの最新情報を集め、頭にたたき込んでいる。そうでなければ本業の基軸である「中小企業へのデジタルエンジニアリング導入支援」などという仕事はできない。

 話がずれた、しかも愚痴っぽい……。さて本題の話を進めよう。

改善のネタ探し

 改善のステップで有名なのはPDCAの管理のサイクルだが、これはすでに目標が決ま

っている場合に使うものだ。経営者から品質方針・目標が示され、それを部門ごとにかみ砕いて計画を立て(P)、実行し(D)、確認し(C)、改善する(A)。この繰り返しだ。

 しかし、現場には改善のネタはいくらでも転がっている。そのネタ探しをするためにはPDCAサイクルよりもCAP-Doサイクルの方が向いている(図4)。CAP-DoはPDCAの順序が変わっただけだが、日々の監視測定から問題点を見いだす実践的なサイクルだ。


図4:PDCAサイクルとCAP-Doサイクル

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