メッシュネットワークの草分け「Z-Wave」の知られざる実力:IoT観測所(37)(3/4 ページ)
メッシュ接続に関する仕様が策定されたBluetoothだが、メッシュネットワークの草分けと言えば、ZigBeeとZ-Waveがある。このうちZ-Waveは、ゼンシスという1企業が策定した規格から始まっているものの、15年以上の歴史とともに、さまざまな顧客企業に利用されているという実績も持っている。
買収後もZ-Wave Plus、Z/IPなどを追加し規格を拡充
シグマ・デザインズによる買収後、今度は同社が中心になってZ-Waveの拡充が図られてゆく。とはいっても、Z-Waveに関するロードマップや技術策定、製品開発などは引き続き旧ゼンシスのメンバーが中心だったようなので、基本的には何も変わっていないというべきか。
2013年にはZ-Wave Plusと呼ばれる、Z-Waveと下位互換を維持した規格がリリースされる。Z-Waveとの違いは以下のようになっている。
- 最大到達距離を150mまで伸張
- バッテリー寿命を最大50%削減
- 転送帯域を250%増し
- 3つのRFチャネルのサポート(これによりノイズ耐性向上と高帯域が実現された)
- ネットワークへのデバイス追加に、新しいプラグアンドプレイの仕組みの導入
- OTA(Over-The-Air)ファームウェアアップデート機能の搭載
- 製品データベースの改善
このZ-Wave Plusは「Z-Wave 500(ZM5101)シリーズ」がサポートしており、要するにシグマ・デザインズのSoC(System on Chip)を使うという構図には違いが無い。しいて言えば、このZ-Wave 500シリーズは、2014年に日本のミツミ電機に対してライセンス提供されており、ミツミ電機がセカンドソースとなって提供を行っているので、一応2社からチップは入手できるようになっているのだが。
このZ-Wave Plusと並行というか、これとは別のレイヤーでTCP/IPへの対応が2007年から検討されており、これはZ/IP(Z-Wave over IP)として標準化が完了している。今どきのスマートアプライアンスは、スマートフォンなりPCから、もしくはクラウド経由で操作とかレポートとかが出来ないとユーザビリティが著しく落ちると判断されるのは当然だし、だからといってスマートフォンにZ-Waveのチップを載せようというのもむちゃな話である。
だからといって、既存のアプリケーションをIP対応にするのも無理がある。何しろ既存のゼンシス/シグマ・デザインズのZ-WaveチップがIPに対応していないのだから、これを改変するくらいならそれこそThreadなりBluetooth Meshなりを使って新しい製品を出すほうが早い。そこでZ/IPでは、コントローラーにTCP/IPネットワークとのゲートウェイ機能を持たせることにして、このゲートウェイ機能を細かく定めることで、既存のZ-WaveのネットワークにTCP/IPネットワークからアクセスできる手段を提供した(図3)。
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