「第4次産業革命」に抵抗感? 調査で分かった日本の製造業の本音:情報通信白書2017を読み解く(前編)(2/4 ページ)
IoTやAIなどを活用する「第4次産業革命」の動きが活発化している。しかし、国内外の企業を調査したアンケートでは、日本の製造業はこの革命に積極的な姿勢を見せているとは言い難い。いわば、第4次産業革命に対してやや及び腰になっているといえる。
第4次産業革命がもたらすものとは何か
現在、デジタル化やネットワーク化により、生産設備や流通(供給)サイドと消費(需要)サイドをICT(情報通信技術)でつなぐことで、効率的な生産体制を構築する動きが生まれている。第4次産業革命は「つながる経済」「つながる産業」として、これらをより具体的な潮流へと推し進める動きである。得られる効果としては2つの方向性のものがある。
1つ目は、技術革新の進展である。ロボティックス(ロボット)、ナノテクノロジー、3Dプリンタ、遺伝子工学、バイオ技術、ブロックチェーン技術など、ネットワークを介すことで相互作用する技術的な進化により、新たな産業革命が生まれる兆しが見えている。第4次産業革命は、ICT産業に閉じた潮流ではなくICTを活用するさまざまな産業に及ぶものである。
2つ目は、新たなビジネスモデルの創出である。「つながる経済」では、つながる前(分断されていた時)には実現できなかったビジネスモデルが成立する。例えば、常にネットワーク接続されることから、機器の稼働状況などが取得可能となり、売り切り型ではなく従来にない多様な貸与・利用許可型ビジネスが生まれる可能性がある。いわゆる「モノ」から「コト」への潮流を加速させるということになる。
日本型産業構造が抱えるピンチとチャンス
新たなビジネスモデルの実現には、企業の枠を超えた新規事業開発や高度な専門スキルを有する社外の人材の起用など「オープンイノベーション」が必要になる。一連の技術やノウハウなどを全て抱える企業はどこにも存在しないからだ。情報通信白書2017によると「第4次産業革命においては、大企業中心で生産機能中心の日本型産業構造では、成長性のある事業や産業創出の機会を逃してしまう可能性もある」と指摘している。
ただ、一方で、総務省の「IoT国際競争力指標」によれば、研究開発の状況を計測する指標としてエンジニア数に着目すると、日本はICT・IoTの両市場で米国企業に次いで高く増加傾向にあるという。つまり技術的なポテンシャルは抱えているということである。すなわち、日本の現状はピンチとチャンスを同時に抱えており、いかに新たな動きに対応するかが勝負の分かれ目になっているといえる。
製造業へのインパクト
情報通信白書2017では、インパクトがあると想定される業種や産業の将来像を予測している。対象として挙がった中では、金融分野、医療・ヘルスケア分野とともに高い影響を受ける業種として「製造業・流通業分野」が取り上げられている。
製造業や流通業においては、従来の「大量生産(マスプロダクション)」から、開発や生産のスピードを重視した「マスラピッド生産」、顧客一人一人からオーダーメイドの製品を既製品と同等程度のコストで注文生産する「マスカスタマイズ生産」が進展すると予想している。
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