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いまさら聞けないLoRaWAN入門産業用ネットワーク技術解説(2/4 ページ)

IoTデバイスを開発する上で重要なLPWA(低消費電力広域通信)ネットワークのうち、自前で基地局設置ができることから注目を集めているのが「LoRaWAN」です。本稿では、このLoRaWANについて、利用者視点で解説します。

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「LoRa」と「LoRaWAN」の違い

 解説記事などでLoRaとLoRaWANというそれぞれの単語が混ざっていたりするため、整理のため解説します。

  • LoRaは変調方式(データ⇔電波への変換方式)
  • LoRaWANはMACレイヤー(L2)によるデータ送受信までを含めた仕様

 以上のような違いがあります。そのため変換方式におけるLoRaのことを「変調LoRa(または、LoRa変調)」と称し、LoRaWANと明確に区別することも多くなってきました(図3)。文脈によってはLoRaをLoRaWANとして見る必要もありますので、注意が必要です。

図3
図3 LoRaとLoRaWANの違い(クリックで拡大)

「LoRaWAN」の特徴

 レイヤー2を含む「LoRaWAN」はセムテックによって開発されていますが、セムテック自身もメンバーとなっているLoRa Allianceによって仕様などが公開されているグローバルかつオープンな通信方式です。

 仕様上はレイヤー構造にはなっていますが、LoRaWANはLoRa変調を使う前提となっており、物理層を別のものに変更して使うことは想定されていません。このLoRa変調ですが、日本国内では2016年11月にアジア向け拡張である「AS923」によって920MHz帯を利用するようになり、それに準拠したモジュールが開発、販売され始めています。

 利用周波数ですが国によって異なります。共通しているのは、その国で空いているISMバンド(Industry:産業、Science:科学、Medical:医療で利用可能な周波数帯)を用いるということのみです。そのため、ある国で利用できるモジュールが別の国では利用できないという事態が容易に発生し得ることに留意が必要です。

 ペイロードサイズ(プロトコルオーバーヘッドを除いた、開発者が利用できるデータサイズ)が極めて小さいことから、レイヤー2よりも上のプロトコルは規定されておらず、開発者の実装となります。そのためJSON(JavaScript Object Notation)のようなリッチな構造化フォーマットではなく、バイナリによる通信が主体となります(図4)。

図4
図4 LoRaWANのペイロードサイズ

 通信距離ですが、障害物や天候などの条件が極めて良い状況で11kmを達成したという実証実験データもあります。しかし、利用する基地局(ゲートウェイ)端末の仕様やアンテナのサイズにもよりますが、業務に利用する場合は屋外で3km程度、屋内や障害物が存在する場合は1km程度での利用が現実的となるでしょう。

 またLoRaWANに限らず電波を用いた無線通信全般にいえることですが、金属製の筐体の中または金属の近隣においては電波が乱れたり遮断されることで通信距離が短くなる、または通信ができないということもありえますので、注意が必要です。

 しかしながら、2.4GHz帯や5GHz帯を用いた通信に比較すると障害物越しの通信に強いので、適用シーンや設置環境を鑑みて試験してみることが一番大切です。

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