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情報革命時代の「ジェントリ」孫正義氏が用意する10兆円ファンドは何を生むか製造業IoT(1/2 ページ)

「ソフトバンクワールド 2017」初日の基調講演に登壇したソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏は、「『新しい時代のジェントリ』を目指し、同じ志を持った投資家が集まることで、情報革命を起こす」と力強く語った。10兆円規模のファンドを設立し、投資を加速するという。

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 2017年7月20〜21日の2日間、ソフトバンクグループの法人向けイベント「ソフトバンクワールド 2017」が東京都内で開催された。初日の基調講演では、ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏が「情報革命が導く、新たな世界」をテーマに「『新しい時代のジェントリ』を目指し、同じ志を持った投資家が集まることで、情報革命を起こす」などと力強く語った。

ソフトバンクグループの孫正義氏
ソフトバンクグループの孫正義氏

 孫氏によると、18世紀にはじまった産業革命の中で、ジェントリ(Gentry)という地主を主体とする資産家が生まれたという。彼らは資産を投資するなどして資本を蓄えた。その資本が産業革命での資金源として新しいテクノロジーの誕生に貢献した。リスクを取る資本と最先端の技術が重なって産業革命が広がっていったとする。

 産業革命は人々の生活を向上させていった。そのころのテクノロジーは、人間の筋肉の力の延長線上にあるもので、より速く走る、より重たいものを持ち上げるなど、身体能力を拡張するものだった。

 現在の情報革命は知能の拡張であり、脳細胞の働きの延長、拡張であると考えられる。「こうした情報革命は、本当にすごい変革をもたらすと考え、ソフトバンクグループは新しい技術に、キャピタル(資本)を投入しその変革を促進したい」と孫氏は投資の促進に意欲を示した。

ARMのIoTとOne Webの衛星通信網で1兆個のIoTデバイスが瞬時につながる

 情報革命の最初は1台1台のコンピュータであった。それがマイクロプロセッサの進化により小型化されPCが普及した。次にそれらのPCがインターネットにつながり、今ではIoT(モノのインターネット)が注目を浴びている。

 そして考える能力も人間をしのぐようになり、AI(人工知能)の時代が訪れようとしている。既に囲碁や将棋では、人間がAIに勝つことは難しくなってきた。アートや医学の世界、産業用ロボットや同時翻訳の世界でもAIは活躍している。AIによるトラフィックデータの解析により交通渋滞ですら緩和され、交通システムの最適化で渋滞を25%改善できるという成果も予想されているという。今後、AIはあらゆる産業の中心に採用されることが予想される。

 さらに、ビッグデータによってAIはさらなる進化を遂げる。「このAIを鍛えているのはデータだ。今まで、産業界で必要とされた資源は鉄や石油などだったが、情報革命にとって最も重要な資源はデータである。このデータを先に多く手に入れたものが勝つ」と孫氏は断言する。

 ソフトバンクグループは2016年にプロセッサIPの設計開発を行うARMを傘下に組み入れた。ARMのプロセッサはIoTの世界で90%のシェアを持つという。また、スマートフォンの99%がARMのプロセッサ技術を用いている。通信モデムで99%、車載情報機器で95%などのシェアがあり「今後も自動車や家電製品などIoTでつながる全製品にARMのチップが採用されることになる」(孫氏)としている。

 また、ソフトグループは次世代低軌道衛星通信の「One Web」に出資した。One Webは米国のベンチャー企業で低軌道衛星720基以上を用いて全世界に低遅延の高速通信を低コストで提供する事業を展開している。孫氏は「固定回線、携帯回線のグローバル化だけでなく、衛星回線も含めて地球上全てを覆ってしまうことが狙い」とし、そして「これからは、ARMによるIoTとOne Webによる世界中の通信網で、1兆個のIoTデバイスが瞬時に、世界中で人だけでなくモノもつながってしまう。人間の回線数は多くても70億回線だが、われわれは1兆回線をつなぐことができる。そういう世界を作ろうとしている」とこれらの事業の狙いを語った。

One Webの衛星製造工場One Webの衛星製造工場 One Webの衛星製造工場(米国フロリダ州エクスプロレーション・パーク)。2018年の稼働開始が予定されている(クリックで拡大) 出典:ソフトバンクグループ

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