ASEANの自動車アセスメントがADAS重視にシフト、歩行者・二輪車対応を評価項目に:安全システム
「2017 NCAP & Car Safety Forum in Tokyo」において、ASEAN NCAPのカイリル・アンワル氏が2030年までの自動車アセスメントのビジョンを説明した。
東南アジア地域で自動車アセスメントを実施するASEAN NCAPは、2021〜2025年に自動ブレーキの配点を増やす。歩行者を検知対象とした自動ブレーキについて、市街地や郊外を想定した速度域の安全性評価をASEAN NCAPとして実施する。2026年までに二輪車を検知して作動する自動ブレーキも対象に加えたい考えだ。
東南アジア各国では、二輪車が被害者になる交通死亡事故の比率が下がらず、対策が急務となっている。自動ブレーキ以外にも、四輪車ドライバーの死角にいる二輪車の検知や、夜間の二輪車の視認性向上などに重点を置く。
マレーシアで2018年6月からESC(横滑り防止装置)が義務化されるなど予防安全が東南アジアでも普及が進む。先進国同様に、新興国市場でも新車購入時に先進運転支援システム(ADAS)が重視されるトレンドが強まりそうだ。
パッシブセーフティからアクティブセーフティに拡大
2017年8月1日に東京都内で開催された「2017 NCAP & Car Safety Forum in Tokyo」において、ASEAN NCAPのカイリル・アンワル氏が2030年までの自動車アセスメントのビジョンを説明した。
現状で評価項目となっているのは、成人及び子どもの乗員保護と、ABS(アンチロックブレーキシステム)やESCなど「セーフティアシスト」だ。車両が検知対象の自動ブレーキや、車線維持支援などのADASは、2017年からセーフティアシストとして評価項目に加わった。パッシブセーフティが主体だった評価項目が、予防安全にも拡大していく過渡期にある。
検討中ではあるが、2021〜2025年、2026〜2030年にかけて段階的にアクティブセーフティ向けのテストの種類を増やす方針だ。ドライバーの死角にいる車両の検知や、自車の前後を車両が横切る時の警告、車線変更時の注意喚起などを2025年までに評価できるようにする。2030年までに、雨天下の安全性評価の実施も計画している。
ASEAN NCAPは2011年に設立された。2016年に安全性評価を実施したモデルは、ASEAN市場の80%をカバーする。対象となったのは販売の上位30モデル全てと、上位60車種のうち46モデルだ。ブランドとしては、BMWとMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)、日野自動車を除く上位17ブランドが評価対象だった。
また、ASEAN NCAPではUber(ウーバー)やGrab(グラブ)といった配車サービス企業が使う車両の安全性評価も行う。マレーシアではライドシェアに使用できるのは星3個以上の車両のみと定めている。
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