日本で全く話題にならないLPWA「EC-GSM-IoT」は途上国で花開く:IoT観測所(35)(2/3 ページ)
日本で全く話題にならないLPWAがある。2G技術のGSMをベースとする「EC-GSM-IoT」だ。ただし、3Gの普及もままならないアフリカや南米などの開発途上国では、EC-GSM-IoTがIoTの通信を担う可能性が高い。
なぜ2Gの技術を利用するのか
そんなわけでほとんどの部分はGSM、つまり2Gの技術を利用しているのだが、なぜこんな規格が策定されることになったのか。
欧米諸国やアジアの各国は、昨今急速に3Gから3.5Gを経てLTEやLTE Advancedに突き進んでいるが、アフリカや南米の諸国ではまだ3Gにも到達していないところが少なくない。例えば、こちらのWebサイトでカバレッジを確認すると、まだ結構3G/4Gのカバレッジがない国が存在しているのが分かる。また、特にアフリカの場合、LTEのカバレッジがあるといっても、極めて局所的なことが少なくない。
例えばガボン共和国の場合、Airtel Gabonが商用LTEサービスを提供しているが、LTE基地局は首都のリーブルビルと同国第2の都市であるポールジャンティに集中しており、後はフランスヴィル(同国第3の都市)に若干と、モアンダ(世界最大級のマンガン鉱山のある都市)に1カ所ある程度。国土の大半はそんなわけでGSMのみのカバレッジとなっている(それすらも怪しいのだが、まぁそれは置いておく)。
こうした国々でIoTのための接続、という議論をする場合にはLTEの基地局網は話にならない。少なくとも向こう10年くらいの範囲は、間違いなくGSMが事実上唯一の「国土全体で普通に利用できるネットワーク」のまま推移することになる。
「一体そんなところでIoTで何をやるんだ?」という声が出そうであるが、GSMA(GSM Association)がEC-GSM-IoTの説明として示しているのは、例えば農耕地の温度とか湿度、空気の汚染度などを定期的にセンサーで測定してその結果を集めるとか、食料の冷凍輸送の際のモニタリングなどに利用できるとか、という話である。モニタリングも、先進国の間だけなら他の通信手段もあるだろうが、途上国が入る場合はモニタリングができなくなる。こうしたケースでは(効率は悪くても)EC-GSM-IoTの方が確実に接続できることになる。
もっともGSMA自身は、EC-GSM-IoTはLTE-MとかNB-IoTと同じ、Mobile IoTというカテゴリーの1つという位置付けであり、後は通信会社がその場所とか要求にあったものを選べばよい、という立場を崩していない(図1)。
図1 GSMAとしては、EC-GSM-IoTであれ、LTE-Mであれ、NB-IoTであれ、通信会社が必要なものを選べばよいという立場だ(クリックで拡大) 出典:2017年2月の「Orange Mobile IoT activities」におけるRonan Le Bras氏(Head of Technical Strategy, Wireless Network)の資料より。同氏はEC-GSM-IoTグループの議長でもある
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