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民間初の宇宙到達を目指すロケット「MOMO」、その挑戦の意義を探るもうホリエモンロケットとは呼ばせない(2/4 ページ)

インターステラテクノロジズ(IST)は、観測ロケット「MOMO」の打ち上げを2017年7月29日に実施する。実業家の堀江貴文氏が創業に関わっているためホリエモンロケットと呼ばれることも多いISTのロケットだが、今回のMOMOの挑戦は、日本の宇宙開発にとって大きな一歩になるかもしれない。

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なぜ「ロケット界のスーパーカブ」を目指すのか

 MOMOのコンセプトは、「ロケット界のスーパーカブ」だという。これについて、IST社長の稲川貴大氏は、記者会見で「これまでの宇宙開発ロケットは、最高性能を求めるフェラーリのようなものだった。しかしわれわれはこれをより身近に、一般の人でも使えるものにしたい」と説明した。その象徴が「スーパーカブ」というわけだ。

「MOMO」は「ロケット界のスーパーカブ」を目指す
「MOMO」は「ロケット界のスーパーカブ」を目指す(クリックで拡大) 出典:IST

 人類が初めて人工衛星の打ち上げに成功したのは、1957年のことである。それからすでに60年も経過しているにもかかわらず、いまだにロケットはスーパーカブになっていない。その理由は、宇宙開発がずっと国家主導で推進されてきたことと無縁ではない。

 しかし、その状況も大きく変わりつつある。すでに米国は、低軌道までは民間に任せ、国はそれ以遠を手掛ける方向に舵を切っている。ベンチャー企業であるSpaceXが開発した「Falcon 9」ロケットは、圧倒的な低価格を武器に、商業衛星打ち上げ市場において大きな存在感を持つまでになった。

 ISTがやろうとしているのは、まさにこれと同じ。民間がやることで打ち上げコストを下げ、宇宙に向かうハードルを下げる。ハードルが下がれば、さまざまなプレイヤーが集まり、市場は大きくなる。打ち上げ回数が増えれば、ロケットの量産効果により、コストはさらに下がる。ロケットの低価格化は、このサイクルに最初の回転を与えることができる。

 堀江氏は記者会見で、「SpaceXに比べるとわれわれは10年以上遅れている」と現状について認識しつつも、「いったん宇宙に到達できれば、弾みがついて資金も集まり、技術開発は加速する。そのうち追い付けると思っている」と、楽観的な見通しを示した。

ISTの実績
ISTの実績。これまでに、北海道で何度も打ち上げ実験を行ってきた(クリックで拡大) 出典:IST

 「高性能」よりも「低価格」を重視する。その結果、ISTが選んだのは、「なるべく特別なことをやらない」という道だ。

 MOMOが作られているのは、北海道の大樹町にある同社の工場。「ロケット」という最先端技術のイメージとはほど遠く、雰囲気はどう見ても普通の町工場である。人によっては、もしかすると「下町ロケット」のような世界を想像するかもしれない。

 しかし、彼らが目指すのはそれとは対極にある。なるべく簡単に、安く作れるロケットを実現する。特別な工作機械は使わず、普通の機械で誰でも作れる部品を使う。特別な部品ではなく、秋葉原あたりで普通に買える汎用品を使う。そこに「匠の技」は必要ない。堀江氏は「最低性能があればいい。飛びさえすればそれで十分」と、とことん割り切る。

 ただし、「簡単に安く作れるロケット」が、「簡単に安く開発できる」というわけではない。簡単に作るためには設計の工夫が必要だし、特にエンジン開発においては、何度も燃焼実験を行って、試行錯誤を繰り返す必要がある。同社もエンジン開発には苦労し、打ち上げが当初の予定より大幅に遅れてしまった。楽をするための努力は必要なのだ。

MOMOのエンジン燃焼実験。予定通り120秒間燃焼させることに成功した(クリックで再生)

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