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コンタクトレンズや膝関節をオーダーメイド開発するSAoE 2017レポート(2/2 ページ)

少量製造や個人計測などの技術を活用した、個人向け医療機器の開発が進みつつある。ダッソーのイベントから、コンタクトレンズの設計自動化と、人工膝関節における筋骨格モデルとFEAを連携させた事例を紹介する。

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クラウド利用でどこでもデータ計測・製造

 Stupplebeen氏は「コンタクトレンズは医療機器のオーダーメイド化の手始めとしてもよい対象」だという。作って万が一合わない場合はすぐに外すことができる。「度の調節、乱視、他の疾患をはじめ、個人の視覚に関する全てをカスタマイズできる。特別な目の病気の人に加えて、航空機操縦者、ゴルフをする人など、とにかく視力をよくしたい人などの需要があるだろう」(Stupplebeen氏)。

 Stupplebeen氏は「私が思い描くのは、クラウドのソルバーにデータを送り、自動でレンズ形状を設計、そのデータを使ってCNC加工を患者のいる場所で行うこと」だという。また現在の取り組みは医療機器に特化しているが、ウェアラブルデバイスへの発展もあり得るとしている。

アジア人に合う人工膝関節を


東京大学工学系研究科機械工学専攻の舒利明氏

 東京大学 工学系研究科 機械工学専攻 光石・杉田研究室の舒利明(シュウ・リイミン)氏は、個別患者の人工関節の運動・接触機構を予測するための、筋骨格・有限要素モデリングのフレームワークづくりに取り組んでいる。

 膝に疾患を持つ患者は、国内だけでも百万人以上になるという。その一方、人工関節は大きく分けて6種類しかない。また欧米製が中心のため、アジア人に適したものはあまりないという。また人工関節は病気などの前と同じように動かせることが理想だが、実際は90度までしか曲げられず、例えば正座やゴルフは難しいなど、行動に制限が生じてしまう。

筋骨格モデルと有限要素モデルを連成

 有限要素法は、関節部分の破損や摩耗の解析を行えるが、個人に応じた全身の運動まで考慮できない。今回は「患者に応じた筋骨格モデルと有限要素モデルを同時に動的に解析したのがポイントになる」(舒氏)。人工関節のシミュレーションについては盛んに取り組まれているが、有限要素モデルと筋骨格モデルは今までは分けて検討されており、同時に行った例は初めてだろうという。

 解析にはSIMULIA Abaqus CAEとSIMULIA Isightを用いた。患者のCTを元に作成した骨構造と、インプラント構造をあわせてモデリングし、筋骨格と組み合わせ、モーションキャプチャーや歩行板で取得した個人の運動データを入れる。そして最適な人工関節の形状や材質を計算する。また、手術時にどのように骨を切断するのが適切かも解析によって検討する。


図3:(a)Abaqusに用意されている筋骨格モデル。特性が単一のため、このままだと特に骨構造やじん帯の特性の違いが検討できない。青い点線は筋肉。(b)患者のCT画像から作られた骨の3Dモデル(サブニーモデル)、(c)人工パーツ、(d)a〜cを統合したハイブリッド人工膝関節モデル。じん帯も簡易化してモデル化している(出典:ダッソー・システムズ)

ランキングトップレベルの精度を実現

 実験結果と比較して、解析の妥当性も検証した。膝中の運動は非常に複雑で、合計6自由度全てが必要になるが、まずは3自由度について評価した。RMSE(二乗平均平方根誤差)によると、屈曲・伸展方向はかなり合っており、それ以外の2自由度についてはまだ改善が必要だという。膝関節の被験者のデータセットを提供し解析精度を競うグランド・チャレンジ・コンペティションの結果における「トップと大体同じ程度の結果が出た。さらに良くなると思っている」(舒氏)。

 現在の人工膝関節のメンテナンス頻度は大体15年だが、自分たちで最適化した設計によって、30年使えるものを作りたいという。現在は左足単独で行っているため、次は右足も同時に扱うといったことを進めていくそうだ。

 また現在、人工膝関節の手術後、慣れるまでに2年ほどかかる。回復状況は骨の切除に伴う摩擦熱の温度や切断面の粗さに大きく左右されるため、患者の骨の強度や形状、症状に応じた切除方法の検討が重要になる。この検討を支援することにより、回復までの期間の短縮にも役立てたいという。

取材協力:ダッソー・システムズ

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