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トランプ政権とIoTがデトロイト3の弱体化を生む、産業構造の転換が急務にIHS Industrial IoT Insight(6)(1/2 ページ)

今後の製造業の発展に向けて必要不可欠とみられているIoT(モノのインターネット)。本連載では、IoTの現在地を確認するとともに、産業別のIoT活用の方向性を提示していく。IoTを取り巻く最大の産業分野とみられる自動車だが、米国市場では大きな産業構造の変革がもたらされつつある。

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米国では既存の自動車産業とハイテク産業の主導権争いが本格化してきた

 米国の自動車市場は今、既存の自動車製造産業とハイテク産業の間で、IoT(モノのインターネット)技術を応用したコネクテッドカーや完全自動運転、そしてモビリティサービスの分野で主導権争いが激化している。

 その背景には、米国の新車販売市場がピークアウトしたことが大きく関係している。2016年のライトビークル(乗用車に加えて、ピックアップトラックやSUVなどのライトトラックを含めた自動車セグメント)の新車販売は1755万台で過去最高を記録したが、既にリーマンショックによる買い控えに対応した買い換え需要は一巡したとみられる。このため、NAFTA(北米自由貿易協定)におけるライトビークルの生産台数も低成長期を迎える。特に2017年は、在庫調整も重なり、マイナス成長になる可能性もある。2018〜2019年は、米国新政権の減税やインフラ投資などの政策効果で、米国の新車需要は1750万台以上に回復するが、一次的な回復にとどまるだろう。

図1
図1 NAFTAにおける国別のライトビークル生産台数の推移と見通し(クリックで拡大) 出典:IHS Markit Automotive

 生産面では、米国の通商政策が現状とほぼ変わらないとすると、各自動車メーカーは、メキシコの安価な労働力と46カ国とのFTA(自由貿易協定)の恩恵を受けるため、メキシコでの現地生産を加速する。一方、フォード(Ford Motor)やFCA(Fiat Chrysler Automobile)によるメキシコから米国への生産回帰が米国生産の増加をもたらすが、米国ではドイツメーカーを中心とした中大型SUV生産が勢いを増すだろう。これら2社にGM(General Motors)を加えたデトロイト3は、ピックアップトラック以外のセグメントで優位性を失い、「地域ブランド化」するリスクも高まっており、産業構造の転換が早急に求められている。

米国保護主義はデトロイト3の国際競争力低下を招く

 米国の自動車市場は現在、年間500万台の大幅な輸入超過に陥っている。トランプ政権はこの貿易赤字を問題視するが、現在の自由貿易下で、その解決は非常に厳しい状況だ。

 例えば、米国の新車需要がピークアウトし、米国への生産設備投資が停滞することにより、ドル高が輸入を助長している。デトロイト3が得意なピックアップトラックは、北米以外ではほとんど需要がない一方で、世界市場で高成長を続けるコンパクトなSUVや高級車の開発が遅れており、輸出機会が乏しいことが要因だ。

 北米では、セダンやハッチバックといったいわゆる「Carセグメント」の開発優先度を下げており、外資メーカーからこのCarセグメントのシェアを奪われている。欧州では、GMのオペル(Opel)売却、南アジアではGMのインド販売市場撤退、タイではGMとフォードがエコカープロジェクトから撤退するなど小型車セグメントでも今後苦戦が予想される。

 仮にトランプ政権がこの輸入超過を解決するために、燃費規制を緩めたり、ピックアップに高関税を課したりなどの保護主義を選択すれば、短期的には米国への生産回帰を実現できたとしても、長期的にはデトロイト3の国際競争力低下を助長する可能性が高い。米国政府は、保護貿易主義ではなく、IoT技術を応用したコネクテッドカーや完全自動運転、モビリティサービスを活性化する政策へ転換すべきだろう。

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