コネクテッドカーがもたらす自動車データ流通の衝撃:TU-Automotive Detroit 2017レポート(2/3 ページ)
コネクテッドカーによって自動車データが流通する未来に向けて、転換期を迎える自動車業界。米国ミシガン州で開催された「TU-Automotive Detroit 2017」のレポートを通してその激動をお伝えする。次代のアマゾン、ウーバーといわれる、自動車データ流通で注目を集めるベンチャー・Otonomo CEOのベン・ボルコフ氏へのインタビューも行った。
このような主張はIT企業だけではない。自動車業界も、自動車を新たな「IoT(モノのインターネット)デバイス」として、これをどう活用するかに意識を向け始めている。ポルシェ(Porsche)は、技術の進歩に乗り遅れないようにするため、最先端技術が集結するシリコンバレーやイスラエルにチームを設けた。またフォルクスワーゲン(Volkswagen)も、ITの重要性を早期から認識し、コネクテッドカーが注目されるはるか前の1998年にシリコンバレーにオフィスを設けており、早期よりITの導入を試みていることをアピールしている。
特にフォルクスワーゲンは「ユーザーエクスペリエンスの向上のために2005年より『Google Earth』を導入しているが、既存の車載システムでは画像処理能力が追い付かないため、NVIDIAをパートナーにすることで処理能力を上げた。これが、NVIDIAが自動車業界に参入したきっかけだった」として、現在自動車領域において最も注目を集めているNVIDIAとの関係をアピールした。
さらにフォルクスワーゲンは、コネクティビティについて、「サービス拡張のためだけでなく、保険や決済など新たなビジネスモデルを作っていく必要がある」と強調し、自動車業界の変化に対応すべきと主張した。
ジーヴォ(Xevo)も「自動車メーカー各社は、自動車から得られるデータをどのように活用して新たなビジネスモデルを構築するかを検討している」ことに触れた。自動車メーカーは、車両が収集するデータを保有しており、それらを活用することにより、パーソナライズ化、安全性の向上、ユーザーエクスペリエンスの向上、ブランドロイヤリティーの獲得、そしてサービス提供とマネタイズによるユーザーの囲い込みと他社との差別化が可能になるとしている。「平均的な消費者が自動車内で過ごす時間は年間300時間に上るといわれており、これらをいかに安全かつ快適なものにするかにビジネスチャンスがある」(ジーヴォ)として、自動車メーカーも、これまでにない新たなビジネスモデルを確立することで、15億米ドルといわれるコネクテッドカー市場にいかに食い込んでいくかを模索しているという。
自動車が収集するデータの活用
コネクテッドカーにより膨大なデータの収集が可能になるとの指摘は前述の通りだが、それが自動運転になると、さらにそのデータ量は増し、一説には1秒間に1TBのデータが自動運転車から収集できるようになるという。このデータをどう活用していくかがビジネスを左右する。
ARIAは、自動車業界はデータの重要性を分かっているようで分かっていないと指摘する。「ユースケースが分からない」「本当にデータを活用したビジネスが構築できるのか」など自動車メーカーが思い悩む中、「最も親和性の高いビジネスは保険だ。保険は運転に関するベーシックな情報を活用することで新たなビジネスモデルを構築した。しかし、実際に収集しているデータは、保険会社が使っているものよりはるかに多い。その“無限のリソース”をいかに活用してスケールしていくかが今後の成功の鍵を握る」としており、今後自動運転時代においては「リカーリングビジネス」が重要になってくると強調した。
ではどこにビジネスチャンスがあるのか。その問いに対し、ラジオ局のCumulus Mediaがヒントを示した。「通常企業がサービスや製品を作る時、エンドユーザーを想定して設計する。しかし、誰が利用するか分からずに提供しているものもある。その典型がラジオだ。ラジオは誰が聞くかも分からない状態で番組を配信し、広告で収入を得ている。今はビッグデータ時代で、同様のビジネスモデルだったテレビさえもセットトップボックスでデータを取っている。一方でラジオはデータを取る手段がない。だから、車載システムのデータはお金を支払ってでも欲しい」のだそうだ。このように自動車が収集するデータを欲する企業は他にも存在する。そういった企業とパートナーを組んでビジネスを展開していくことが今後の成功の鍵になってくるというのだ。
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