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細胞凝集体の中に栄養や酸素を供給できる血管網、組織培養に展開可能医療機器ニュース

京都大学は、培養した組織の中に毛細血管状の管を通し、血流を模した流れによって栄養や酸素を供給できるマイクロ流体デバイスを開発した。これまで困難だった組織培養や、長期の組織観察に展開可能だという。

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 京都大学は2017年6月1日、培養した組織の中に毛細血管状の管を通し、血流を模した流れによって栄養や酸素を供給できるマイクロ流体デバイスを開発したと発表した。京都大学大学院 工学研究科 准教授の横川隆司氏、特定助教の梨本裕司氏、九州大学大学院 医学研究院 教授の三浦岳氏、熊本大学 国際先端医学研究機構 特任准教授の西山功一氏らの研究グループによるもので、成果は5月31日、英学術誌「Integrative Biology」オンライン速報版に掲載された。

 マイクロ流体デバイスは、細胞と同程度のマイクロメートル単位の流路を持ち、体の中と同じような細胞同士の作用を再現できる。研究グループは、マイクロ流体デバイスを用いることで、細胞の形態形成能によって自発的に形成された血管の末端が、人工的な流路に接続する血管を作製した。

 まず、血管を誘導する繊維芽細胞で細胞凝集体(スフェロイド)を構築し、血管内皮細胞を培養した流路チャネルから血管を誘導できることを確認。スフェロイドを構築する繊維芽細胞の数が増えるほど、血管を誘導する作用が強くなることを明らかにした。しかし、誘導された血管は成長を停止し、スフェロイドの内部に液体を流せる血管網を作ることはできなかった。

 次に、スフェロイドの中に血管を模した構造体を作製したところ、流路チャネルからスフェロイドに誘導された血管はスフェロイドの中の血管様の構造体に融合し、一体的な血管網を構築した。その血管網は、血液内のタンパク質と同じサイズの分子を流すことができ、血球成分と同程度の大きさのマイクロビーズが通過できた。さらに、この血管網を介して細胞に作用する化学物質を流すと、血管網がない場合と比較してスフェロイド内部の細胞と化学物質が素早く反応した。これらの結果から、構築した血管網が栄養や酸素の供給経路として利用可能であることが確認できた。

 これまで、摘出組織や人工組織の中に血管の構造を作ることには成功していたが、いずれも末端が「閉じた」構造で、実際に栄養や酸素を供給する経路として利用することはできなかった。今回開発した手法は、組織培養や長期の組織観察に展開可能だという。

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組織モデルの培養に用いたマイクロ流体デバイス。左:マイクロ流体デバイスの写真(赤:流路チャネル)、右:写真内の青い四角部分の模式図(クリックして拡大) 出典:京都大学
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(a)左上:デバイス中央部の模式図、左下:スフェロイド培養部の拡大図。流路チャネルからの血管(緑)がスフェロイドの中に構築した血管を模した構造体(赤)と接続する。(b)構築した血管網へ赤色のマイクロビーズを流した時の様子(クリックして拡大) 出典:京都大学

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