2018年度には売上高1兆円超え、日立が考えるIoT基盤の3つの成長パターン:製造業IoT(1/2 ページ)
日立製作所は、報道陣やアナリスト向けに個別事業の事業戦略を発表する「Hitachi IR Day 2017」を開催。IoT基盤「Lumada」関連事業の売上高は2018年度には1兆円を突破する目標を掲げた。
日立製作所は2017年6月8日、都内で報道陣やアナリスト向けに個別事業の事業戦略を発表する「Hitachi IR Day 2017」を開催。日立製作所 執行役専務 サービス&プラットフォームビジネスユニット CEO 小島啓二氏が、事業成長の1つの核となるIoT基盤「Lumada」関連事業の戦略を説明した。
日立のIoT基盤「Lumada」
日立製作所では、IoT活用における導入期間の短縮化と効果の最大化を目指すため、2016年5月にIoTプラットフォームの「Lumada」を発表した。「Lumada」は、データの統合、分析やシミュレーションから知見を得るソフトウェア技術などで構成される汎用性の高いIoTプラットフォームである。自社内にIT、OT、プロダクトシステム(製品)の3つを抱えていることにより、IoTによって求められるCPS(サイバーフィジカルシステム)の技術的要素の大半を自社でカバーできる他、さまざまな企業体を抱える日立グループのノウハウをソリューションに組み込んで提供できることが特徴である※)。
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小島氏は「日立製作所は、IT(情報技術)とOT(制御技術)のそれぞれのリソースを自社内にかかえていることが競合他社にない強みだといえる。また、アプローチも異なっている。プラットフォームや製品を単純に提供するのではなく、さまざまな顧客との共創により新たな価値を作り出す活動を進める点が独自の特徴だ」とLumada事業の展開について述べる。
「Lumada」事業の2つのマネタイジング領域
日立製作所では以前からITとOTの強みを生かし、社会インフラを高度化するような個別のソリューションを展開してきた。IoTは、サイバー空間と物理空間をデータを通じて緊密に連携させコンピューティングパワーを現実世界の最適化に生かすCPS(サイバーフィジカルシステム)を構築することで、価値を生む。日立製作所の強みは社会インフラ事業での個別ソリューションでさまざまな産業におけるCPSの“ひな型”を既に保有しているという点である。これらの経験を生かし「Lumada」の展開においては2方向でのマネタイズを推進していくという。
1つ目が従来同様のシステムインテグレーション(SI)を基軸とした「Lumada SI事業」である。これは「Lumada」プラットフォームを活用しつつ、顧客の要望に合わせて一品物のシステムを作り上げるというビジネスである。もう1つが、このSI事業で得られた知見を抽出し、さまざまな企業や業界に当てはまる形で抽象化した“ひな型”(ソリューションコア)を作り、それを複数企業に展開する「Lumadaコア事業」である。
Lumada SI事業については、既に現在もさまざまな顧客企業と共同で取り組んでおり、2016年度の売上高は約7800億円。2017年度は7600億円、2018年度も7600億円を計画しており、大きな伸びはないが、一定規模を維持する見込みだ。小島氏は「Lumada SI事業は、コア事業におけるソリューションコアを生み出す源泉でもある。そのため大きな伸びを求めるのではなく、安定的な規模を維持していく」と事業方針について述べている。
売上高の大きな伸長を期待するのがLumada コア事業である。Lumada SI事業で作り出したソリューションコアを水平展開するため、大きな成長を見込む。既に2016年度の実績として1200億円の売上高を実現しているが、2017年度は1900億円、2018年度には2900億円に拡大することを目指す。「この領域が伸びるかどうかがポイントだ。現状では強い手応えを感じている」と小島氏は語る。具体的には海外での提案拠点の強化や、外部販売パートナーの開拓、IoT人材の強化などに取り組むとしている。
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