検索
連載

「空飛ぶ乗り物」をMade in Japanで――ヒロボーオンリーワン技術×MONOist転職(12)(2/4 ページ)

日本の“オンリーワンなモノづくり技術”にフォーカスしていく連載の第12回。今回は、世界シェアトップクラスのラジコンヘリ技術を武器に「1人乗り有人ヘリコプター」という新市場へチャレンジするヒロボーを紹介する。

Share
Tweet
LINE
Hatena

産業用ヘリコプター事業へ

 ラジコンヘリの技術を産業用途にも活用し、1987年には農薬散布用の無人ヘリコプター「R-50」をヤマハ発動機と共同で開発。産業用ヘリコプター事業をスタートさせた。農業用の産業用無人ヘリコプターの日本での登録台数は約2800機にのぼる。

 「農業も高齢化が進み、重い薬剤を背負って散布する作業は重労働で農家の負担になっていることもあり、産業用ヘリコプターが活躍する状況にはなっている。だが日本全国の圃場(ほじょう)全てをカバーしているわけではない」(片山氏)

 市場が拡大しない要因にヘリコプターの「大きさ」と「騒音」がある。実機さながらに空中で安定静止できるホバリング機能はヘリコプターの売りでもあるが、一般的なヘリコプターと同様の形式であるシングルローター+テールローター式は機体が大きくなり、搬送にはトラックや大型ワンボックスカーが必要となる。山間部や狭い農道しかない農地も多い日本では、その大きさがネックとなることも少なくないのだ。

 また動力にエンジンを使うため、飛行時は70dBを超える騒音が鳴り響く。70dBは電話のベル/掃除機/ドライヤーの騒音レベルに相当する。日本では農地に住宅地が隣接するような場所も多いため、この騒音問題もヘリコプターによる農薬散布普及を妨げる要因となっているのだ。

オンリーワン技術「同軸反転」「可変ピッチ」

 同社ではこれらの問題を解決すべく、電動の無人ヘリコプターの開発に着手。ラジコンヘリで培った技術を生かした「HX-1」を2012年に発表した。上下2つのメインローターが逆回転する「同軸反転方式」を採用しており、同クラスのシングルローターヘリと比較してコンパクトで可搬性に優れ、自律安定性が高いのが特徴だ。この同軸反転という方式は、一般のヘリコプターではロシアのカモフという航空機メーカーが軍用ヘリ(艦載用)向けに採用しているぐらいのレアな技術。だがヒロボーのラジコンヘリでは同軸反転方式を製品化している。長年ラジコンヘリを開発してきた同社ならではのオンリーワンテクノロジーなのだ。

 「同軸反転によってテールローターが要らなくなり、軽トラックの荷台に載せられるサイズに小型化できた。テールローターの風の影響を受けず農薬が真下に散布できるのも同軸反転方式の特長。そして電動化によって騒音レベルは58dBという大幅な静音化を実現した。近隣への騒音対策だけでなく、オペレーター自身の騒音ストレス低減にも効果がある」(片山氏)

 現在はHX-1をベースに、より小型・軽量化を図った「HX-2」を開発。ローターの折りたたみ機構によって可搬性を向上させた他、パイプフレーム構造の採用で用途に応じて搭載機器を換装できるようになった。このHX-2にさまざまなセンサーやカメラを搭載し、大規模火災における消火活動時のセンシング用や、空中から3次元位置情報を効率的に取得するのに活用するという実証実験も進められている。

photo
「HX-1」(左)と「HX-2」(右)

 「2017年3月に消防庁から発表された消防ロボットシステムの実演で、コンビナート火災など大規模火災時の飛行型偵察・監視ロボットとしてHX-2をベースにしたものが紹介された。また、地図測量レベルのデータを精密に取得できるものも大手電機メーカーと共同開発している。自動運転に使える高精度なデータが空から取得できるようになる」(片山氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る