「CeBIT 2017」にみる、ドイツにおけるインダストリー4.0の現在地:IoTと製造業の深イイ関係(4)(1/3 ページ)
脚光を浴びるIoT(モノのインターネット)だが、製造業にとってIoT活用の方向性が見いだしきれたとはいえない状況だ。本連載では、世界の先進的な事例などから「IoTと製造業の深イイ関係」を模索していく。第4回は、「CeBIT 2017」の取材から見えてきた、ドイツにおけるインダストリー4.0の取り組み状況を報告する。
2017年3月20〜24日の間、ドイツ・ハノーバーでB2Bに特化したIT展示会「CeBIT 2017」が開催された。ドイツ企業が展示の中心となる同展示会において、「デジタルトランスフォメ―ション」をキーワードに、製造業のデジタル化による運用の効率化、つまり「インダストリー4.0」の実現を目指す各種ソリューションが展開された。
また、ここ数年は「パートナーカントリー」が選定され、当該国の企業が出展する専用エリアが設けられるが、今回は日本がそのパートナーカントリーとなり、例年の約10倍にあたる118の企業や団体が出展した。会場となったハノーバーメッセには桜が植えられ、3月19日の前夜祭には日本の首相の安倍晋三氏も参加するなど、ドイツと日本の友好関係を強調するような演出となっていた。
製造業を支える中小企業への期待
この前夜祭「Welcome Night 2017」は、物々しい警備の中、政財界や報道記者などを中心に約2000人が参加した。登壇した安倍氏は、ドイツと日本の共通点として「モノをつくることに誇りを託し、無上の喜びを感じる」「イノベーションの担い手に優れた中小企業が存在する」ことを挙げ、両国が互いに協働することが重要であると主張した。
一方、ドイツ首相のアンゲラ・メルケル氏は、デジタル化の実践の重要性について語り、CeBITのテーマでもある「D!conomy」を後押しするとともに、「中小企業のサポートなどを通じて自由貿易、民主的な価値を守っていくことを峡谷で協力していきたい」として安倍氏のスピーチに呼応した。
翌20日には、安倍、メルケル両首相が、神戸製鋼所や日立製作所、NTTなど日本企業のブースと、ダーマログ(DERMALOG)やAVM、ゼンハイザー(Sennheiser)などのドイツ企業のブースの視察を行った。
存在感をみせるドイツ企業
ハノーバーメッセのホール4には、日本パビリオンの他、ドイツテレコム(Deutsche Telekom)やSAPなど、ドイツを代表する企業がブースを構えた。テーマは「IoT(モノのインターネット)」が中心で、各社ともさまざまなソリューションを展開していた。
ドイツの通信事業者最大手であるドイツテレコムは、次世代通信技術である5Gの可能性をアピールすると同時に、2017年より欧州8カ国で提供開始するモバイルIoTネットワーク「NB-IoT」を活用したソリューションにも注力していた。
NB-IoTとは、モバイル通信で利用されるLTEを狭い周波数帯域にし、低消費電力を実現したIoT機器向け通信規格で、小容量データを低コストで伝送できるとして期待されている。
今回のCeBITでドイツテレコムはNB-IoTを活用したソリューションを複数展示していた。例えば、NB-IoTを搭載したセンサーデバイスを埋め込むことで駐車場の空き情報を管理し、スマートフォンアプリ上から予約および支払いができるソリューションは、2017年末にドイツのハンブルク市でサービス開始予定だ。
また、養蜂箱に各種センサーを取り付け、温度や湿度から蜂が最も蜜をつくりやすい環境を分析したり、あるいは音により蜂が元気かどうかを把握したりすることにより効率的な養蜂を実現するスマート養蜂箱は、これまで2Gで運用されていたが、今後はNB-IoTの活用によりコストダウンを可能にするとしている。その他にも、エレベーターの運行回数や振動数などから故障を予測し予防保全を実現するソリューションにもNB-IoTが活用される。
前述の通り、NB-IoTは、小容量データを省電力で伝送可能な新たな通信規格であり、昨今話題のLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークのLTE版である。これまでLoRaやSIGFOXなどがIoT機器向け通信を展開していたが、そこに新たに通信事業者が加わる形となり、今後ますますIoTが発展していくことがうかがえる。
またSAPは、同社の製品群である「SAP HANA」や「S/4HANA」、「SAP Cloud Platform」などを中核に据え、アディダス(Adidas)との協業によるVR(仮想現実)/AR(拡張現実)を用いたショーケースや、交通機関向け事故防止/運用効率化サービス、空港向けIoTソリューションなどを展示していた。さらに、パートナー企業の展示エリアを広く設けるなど、IoT時代においてパートナーリングが重要であることを強調した展示となっていた。
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