追い込まれた日系自動車メーカーは、世界最大の市場でどんな夢を見るのか:和田憲一郎の電動化新時代!(24)(1/3 ページ)
2017年の上海国際自動車ショーはドイツと中国の自動車メーカーの躍進が目立った。逆に日系自動車メーカーは新エネ車の提案などでの打ち手が不十分だった。中国政府の政策にもついていけず、翻弄されているように見受けられる。日系自動車メーカーが行き詰る中、筆者が中国の新エネ車市場のシナリオを読み解く。
上海国際自動車ショーは2017年4月28日に閉幕した。ショーでは、Volkswagen(VW)、アウディ(Audi)、BMW、ダイムラー(Daimler)などのドイツ自動車メーカーと、それ以上に「新エネルギー車」(以下、新エネ車。電気自動車とプラグインハイブリッド車が含まれる)の品ぞろえを増やした中国自動車メーカーが目立った。
特に、中国自動車メーカーはBYD、北京汽車、上海汽車、第一汽車、長安汽車、吉利汽車、奇瑞汽車など大手を筆頭にさまざまな自動車メーカーが電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の量産車やコンセプトカーを展示し、今後の飛躍の機会を狙っているように思えた。
正直、日本ではあまり紹介される機会がないが、中国でこれほどまでに新エネ車が増えたとは驚きであった。2016年は新エネ車の生産台数が50万7000台、2017年は80万台を超えるとの情報がある中、さもありなんと思ったものである。
同時に、中国政府は、国家発展改革委員会を中心として、矢継ぎ早に各種自動車政策を打ち出している。2017年4月末の「自動車産業中長期発展計画」や、2016年に打ち出された、企業平均燃費規制(CAFC:Corporate Average Fuel Consumption)と連動したNEV(New Electrical Vehicle)規制などもその一環であろう。
これらにドイツと中国の自動車メーカーは連動して対応しているものの、日系メーカーはそれについていけず、どうして良いのか翻弄されているように見受ける。しかも、これからますます窮地に陥っていくと思われる。
なぜこのように日系メーカーは追い込まれてしまったのか。どこがターニングポイントだったのか。はたまた、追い込まれた日系メーカーにはどのようなプランが想定されるのか。行き詰まりを見せている中、筆者なりにシナリオを読み解いてみたい。
2014年がターニングポイント
連載第19回「中国新エネ車が席巻する、2016年の電気自動車/プラグインハイブリッド車市場」の通り、中国政府は、2012年に「省エネルギー・新エネルギー自動車産業発展計画」を公表し、関係政府機関による新エネ車の購入補助金、税金や諸費用の減免、貸付金利の優遇など総合的な支援を打ち出した。
実際に新エネ車市場が急伸し始めたのは、「省エネルギー・新エネルギー自動車産業発展計画」が打ち出されてから2年後の2014年からである。それまで新エネ車といえども、鳴かず飛ばずであったが、2013年の1万7600台から、2014年は前年比で4倍以上の7万4700台まで急増した。
2015年11月には「電気自動車の充電インフラの発展に関するガイドライン」を公表し、2020年までに集中型充電・交換ステーションを1万2000カ所、分散型充電スタンドを480万カ所設置する目標を打ち出している。
振り返ってみると、やはり2014年がターニングポイントだったように思える。その後、インフラ拡充政策まで実行されるに及んで、中国自動車メーカーは一気に新エネ車開発に舵を切った。残念ながら、当時の日系自動車メーカーは、どちらかと言えば、まだ流れは来ないと様子見であった。
この政策が功を奏したのか、2016年の新エネ車は約50万台まで達している。なぜ日系自動車メーカーは出遅れたのかを関係者に聞くと、多くの人が2つのことを指摘する。1つは「まさか、これほど急激に新エネ車が伸びるとは思ってもいなかった」ということ。もう1つは「中国独自の新エネ車を作ってもらうように要望しても、これはなかなか通りにくい」ということである。
確かにこれまでは、日米欧の市場向けに開発したEV・PHEVを、中国向けに仕立て直して生産すれば良いという考え方が強く、少量であればノックダウン方式でと考えがちであった。日産自動車の電気自動車「リーフ」をベースに、一部を現地化した東風日産の「VENUCIA(ヴェヌーシア)」ブランド「e30」もその例であろう。
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