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「IoT導入の壁」を乗り越える「IoT導入計画」とは先行事例から見る製造業の「IoT導入の壁」(後編)(1/3 ページ)

先行事例から抽出したIoT導入に向けた整備事項となる「IoT導入の壁」を前後編に分けて解説する。後編では、「IoT導入の壁」を乗り越える「IoT導入計画」について、「IoT活用の発展ステージ」と「IoT活用シナリオ」に分けて解説する。

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 前編では、先行事例から、IoT(モノのインターネット)導入における「整備事項」を6つの領域で抽出・整理した「IoT導入の壁」について説明した。後編では、IoT活用の方向性を「IoT導入計画」として具体的に落とし込むためのポイントについて解説する。

 「IoT導入計画」では、これまで現場で取り組んできたセンサー技術活用の「現場改善レベルの取り組み」=「やれること」と、経営から求められる「革新的な未来像」=「やりたいこと」との間のギャップを認識し、IoTでの効果を刈り取りつつ、最終的にIoT活用による費用対効果を説明できるようなIoT活用の発展の道筋(ロードマップ)の作成が重要となる。

 まずは、このギャップを整理する上で有効となる「IoT活用の発展ステージ」について解説する。

IoT活用の発展ステージとは

 製造業におけるIoT活用の方向性を、IoT活用範囲の広がりを軸に、どのレベルでの「つながり」を目指すのかに着目してステージ分類したものが「IoT活用の発展ステージ」である(図1)。

図1
図1 IoT活用の発展ステージ(クリックで拡大) 出典:日立コンサルティング

 ステージ1とは、IoTの活用範囲が工場内で閉じたレベルである。昨今、多くの企業でPoC(概念実証:Proof Of Concept)として、センサーを設置して新たなIoTデータの収集を行うような概念実証レベルのIoT関連の取り組みが実施されているが、まだまだ多くの製造業がこのステージにとどまっているものと思われる。

 ステージ2は、IoTの活用範囲が企業内の複数工場に跨っているレベルになる。一部の先進的な企業において、マザー工場がリードし、マザー工場でのIoT活用ノウハウを国内・海外のチャイルド工場の見える化や統合管理に横展開しているのがこのステージである。

 ステージ3は、IoTの活用範囲が工場を飛び越え企業全体につながっているレベルである。経営層のIoT活用への期待値は、自社や自社グループでの製造・SCMの全体最適など、より経営インパクトのある取り組みにあることが多いようであるが、それはこのステージに位置付けられる。また、工場ごとの生産状況をリアルタイムに把握し、工場間の生産能力と顧客からのオーダー情報をダイレクトにひも付け、全体最適な生産計画、生産指示を行っていくようなマスカスタマイゼーションはまさにこのステージにあるといえる。

 ステージ4は、「つながり」が企業全体だったステージ3をさらに押し進め、IoTの活用範囲が企業間を跨っているレベルだ。国や業界レベルでの全体最適化や競争力強化に対する将来的な期待を示したステージとなっている。このステージが実現されると、社会構造そのものが変革するレベルであり、いわゆる「Society 5.0」の世界であるともいえる)。

関連記事:Society 5.0によって目指す「超スマート社会」、人工知能やIoTで実現できるのか

 このように発展ステージが、活用範囲の狭いステージ1から広いステージ4へと移行するに従い、そこから導出される経営効果も大きくなる。一般的に経営が期待する領域はステージ3以降にあると言え、インダストリー4.0もこのステージ3を目指した取り組みだといえるだろう。

 しかしながら、ステージが上がるに従って、実現の難易度も飛躍的に上がっていくことに留意しなければならない。前編で解説した「IoT導入の壁」と「IoT活用の発展ステージ」の関係を整理したものを図2に示す。

図2
図2 「IoT導入の壁」とIoT活用の発展ステージ(クリックで拡大) 出典:日立コンサルティング

 実現したいIoT活用がどの発展ステージに属するかにより、整備事項の幅も当然変わり、幅が広がればその実現難易度も相対的に高くなる。ステージ1の段階から「システム環境の壁」「データ定義・品質の壁」「技術・スキルの壁」そして「運用上の壁」に関する整備項目への対処が必要となっている一方で、ステージ2の一部やステージ3、ステージ4のように活用範囲が広がるにつれ、新たに「データ連携の壁」や「会社・組織の壁」に関する整備事項が効果創出には不可欠となってくる。

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