成熟したアナログ技術を武器に――イサハヤ電子:オンリーワン技術×MONOist転職(10)(2/3 ページ)
日本の“オンリーワンなモノづくり技術”にフォーカスしていく連載の第10回。今回は、アナログ技術の需要が急増する中で“アナログ専業の国産半導体メーカー”として存在感を示しているイサハヤ電子を紹介する。
世の中に欠かせない「アナログ」
「枯れた技術も市場からはニーズはなくならない。なぜアナログかと問われたら『世の中からなくなることはないから』」――。
アナログ専業での事業展開について同社取締役 常務執行役員 社長室 室長の祖父江宗敏氏はこう答える。大手の競合がアナログ製品の品種をしぼる中、同社ではアナログ半導体専業として、パワーモジュール事業(IGBTドライバ、DC/DCコンバータ、カスタム電源、インバータ、ハイブリッドIC)とディスクリート事業(ダイオード、トランジスタ、MOS-FET、IC)の2本柱を展開。IGBTドライバは中容量以上で国内シェア1位、トランジスタは国内シェア2位と高い競争力を誇る。
三菱電機系列だったころから得意とするのがハイブリッドICで、IGBTドライバやDC/DCコンバータもハイブリッドICのカタチで標準品として設計したものを販売している。特にIGBTドライバは、古くから三菱電機との共同開発体制が構築されており、資本関係がない現在でも評価などは三菱電機に依頼するなど協力関係が続いている。
一方、DC/DCコンバータの開発は100%自前で行っており、小型〜中型の産業機器向け制御電源用を得意とする。「現在注力しているのが、一般の電機メーカーが標準品としてやっていない1000ボルト入力などの入力電圧の高いタイプ。用途は限られるが、太陽光発電など新エネルギーの分野でニーズが高まっている。モジュール製品ではまず標準品として製品化し拡販することで使ってもらい、さらにパワーの必要な用途だったりするカスタム品の受注へとつなげていくという戦略を展開している。制御用ソフトまで社内で開発できる体制を構築している」(祖父江氏)。
もう一つの柱がダイオード、トランジスタ、MOS FETなどのディスクリート半導体。創業時から生産しているこれら小信号の半導体デバイスが同社の源流だ。現在注力しているのは同社が「MFT(multi-function transistor)」と呼ぶカスタムIC。あらかじめトランジスタや抵抗を配置したコアチップ(半完成品)を準備しておき、ユーザーの回路に応じてアルミ配線を施してチップを完成させていく。低コストで開発でき、開発工期も短くできるのがMFTの特長だ。MFTでは回路をもらってから1週間程度でブレッドボードの提供まで行い、すぐにファンクションを確認することで約1カ月でデバイスとして提供できる。このようなスピード感とフットワークの良さも、同社が市場から支持される理由の一つだ。
「従来は小信号のものしかなかったトランジスタも、パッケージの大型を進めて5Aクラスにまで拡大した高耐圧製品もラインアップしている。これは電源関連や駆動回路で大電流化のニーズが出てきたため。MFTについても電源関係の保護回路の標準品を開発し、そこからカスタムの受注を獲得していくといったことを今後狙っていく」(瀬上氏)。
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