狙われる工場や自動車、トレンドマイクロが業種別セキュリティを展開:IoTセキュリティ
トレンドマイクロはIoTセキュリティにおける業種別ソリューションを強化する。主に自動車向け、工場向け、家庭向けの3分野で重点的な取り組みを行う。
トレンドマイクロは2017年3月29日、2017年の法人向け事業戦略発表会を開催。人工知能(AI)技術を用いたセキュリティソリューション「XGen」の展開を本格化するとともに、IoT(モノのインターネット)セキュリティに向けて業種に合わせた取り組みを強化していく方針を示した。
サイバーセキュリティの現状は、クラウドなどのITインフラの移行、モバイルやIoTなどによるユーザー行動の変化、ランサムウェアなど新たな脅威の出現などがあり、大きな変化の局面にある。
トレンドマイクロ 代表取締役社長兼CEOのエバ・チェン氏はこの状況に対し「孫氏の兵法」から「水は地に因りて流れを制し、兵は敵に因りて勝ちを制す。ゆえに兵に常勢なく、水に常形なし」という言葉を引用し「守る者と攻める者との戦いにおいて、必ず勝てるという形は存在しない。その時々において最適な形を取ることが重要だ。その意味で、トレンドマイクロは柔軟性や俊敏性の高いシステム開発を進めるとともにいつでも変化させていくということが強みである」と述べている。
さらに、成功へのアプローチとして「x=I(ITインフラ) + U(ユーザー行動) − T(脅威)」という方程式を示し、これらに対応する新たな防御アプローチとして「XGen」を示した。
「XGen」に基づいたセキュリティソリューション
新たな取り組みとして、先進技術と過去の実績を融合した防御アプローチ「XGen」に基づいたセキュリティソリューションを展開する。発展が進む脅威に対して、AIやサンドボックスなどの先進技術と、パターンマッチングなどをはじめとした過去の高い実績を持つ技術群を組み合わせた新たな防御アプローチを「User Protection(多様な環境におけるユーザーの保護)」「Hybrid Cloud Security(クラウドおよび仮想化セキュリティ)」「Network Defense(複雑化するネットワークの防御)」という3つの領域で展開する。
自動車向け、工場向け、家庭向けでIoTセキュリティを展開
普及が加速するIoTについては、新たに用途別のソリューションを用意する。自動車向けの「Connected Car」、工場向けの「Smart Factory」、家庭向けの「Connected Home」を用意し、それぞれの領域に最適化した製品群をソリューションとして提供していく。
自動車向けの「Connected Car」としては、ソフトウェア開発キット(SDK)を含むIoT機器向けセキュリティソリューション「Trend Micro IoT Security」を自動車および車載機器メーカーに提供する。システム整合性確認や異常検知、脆弱性検知など自動車のリスク検知などを行う他、アクセス制御や仮想パッチなどシステム保護を実現する。
トレンドマイクロ 取締役副社長の大三川彰彦氏は「車載向けは2年前から提案を進めてきたが、採用まで時間がかかるのでまだ明確な動きはない。現状ではOEMメーカー、車載機器メーカーなどに幅広く提案を進めている段階で、その中で一歩一歩話を進めているという状況だ」と車載分野での提案状況について述べる。
工場向けの「Smart Factory」では、工作機械や産業用ロボットを提供するメーカーに対して、既にネットワーク型脅威対策製品「Deep Discovery Inspector」、ロックダウン型ウイルス対策ソフト「Trend Micro Safe Lock」「Trend Micro IoT Security」を提供している。また、PLC、EWS、FAユニットなどを用いて産業用システムを構築する制御系システムインテグレーターと協業し、ネットワークセキュリティ製品「TippingPoint」、総合サーバセキュリティ対策製品「Trend Micro Deep Security」などのセキュリティソリューションを提供していく。
家庭向けの「Connected Home」では、既に複数の家電をまとめて守るホームネットワークセキュリティ製品「ウイルスバスター for Home Network」を提供しているが、今後通信事業者と協業してセキュリティを付加したインターネットサービスを展開する。また、ルーターなどを提供するネットワーク機器ベンダーにネットワークレイヤーで保護するセキュリティ技術「Trend Micro Smart Home Network」をOEM提供を進めていく。
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