パナソニックが高磁界対応の磁気角度センサー、レゾルバ方式から置き換え狙う:車載半導体
パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社は、電動パワーステアリングやモーター機能付き発電機(ISG)のモーター向けに、磁気角度センサーを開発した。サイズと重量が大きく、機能安全に対応した冗長設計が難しいレゾルバ方式の角度センサーからの置き換えを狙う。
パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社は2017年3月29日、東京都内で記者説明会を開催。同年3月27日に発表した、電動パワーステアリングやモーター機能付き発電機(ISG)向けに開発した車載用磁気角度センサーの特徴や利点について説明した。
これまでの磁気角度センサーは高磁界では精度が確保できず、モーターのシャフトへの取り付け位置に制限もあったため、車載用モーターでは精度が確保できるレゾルバ方式の角度センサーが主流だった。
開発品は、薄膜のAMR(異方性磁気抵抗素子)を採用することで高い磁界でもレゾルバ方式と同等の精度を実現した。レゾルバ方式と比較して重量を半減できる。回路の二重化によって冗長性を確保した他、素子の異常を検出する自己診断機能を内蔵し、機能安全にも対応する。これらの特性を基に、サイズと重量が大きく、機能安全に対応した冗長設計が難しいレゾルバ方式の角度センサーからの置き換えを狙う。
2017年5月からサンプル出荷し、2019年9月から受注を開始する予定だ。2025年に売上高400億円を見込んでいる。
従来の磁気角度センサーとの違いは
パナソニックとしては初めて磁気角度センサーを車載向けに開発した。従来の磁気センサーの課題を克服するため、高い磁界に対応できるAMRを採用した。従来の磁気角度センサーでは磁界の強度が100mTだと正常な機能が保てなかったが、開発品は200mTでも高精度な検出が可能だとしている。複数のモーターが搭載され、磁場の乱れが大きい環境下に向くという。
AMRは、磁界の向きに合わせて膜の磁区の向きが変化し、その結果として変動する抵抗値に基づいて回転角度を検出している。開発した車載用磁気センサーは、AMRの膜厚をパナソニックの従来製品の半分に薄膜化して形成することにより、高精度な角度検出を実現した。AMRは膜が薄いほど磁区の方向がそろいやすく、磁界の強度が変動しても高い精度で検出できるため、モーターの回転軸上にセンサーを設置する必要がない。
従来の磁気角度センサーは磁界が均一であることが必要で、モーターの中心軸上の限られた領域に配置しなければならない。そのため、レゾルバ方式の角度センサーを採用していた状態から設計変更も発生した。
AMRとホール素子を組み合わせたのも特徴だ。AMRは半周分の0〜180度までしか角度を検知できないが、ホール素子で90度の位置と270度の位置を識別した上で制御回路で角度演算を行うことにより、全周となる360度の角度検知を実現した。25℃での角度検知精度は±0.1度以下で、レゾルバ方式と同等の精度を確保している。
これまでパナソニックが蓄積したAMRの知見を生かし、素子に異常が発生しそうな状況を基に故障予兆を電子制御ユニットに知らせる自己診断機能も実現した。
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