スズキの燃料電池スクーターがナンバープレートを取得、静岡と福岡で走る:燃料電池車
スズキの燃料電池二輪車「バーグマン フューエルセル」がナンバープレートを取得し、公道走行を開始する。2016年2月に国土交通省が公布、施行した燃料電池二輪車に関する保安基準に基づき、スズキはバーグマン フューエルセルの車両型式を申請。2016年8月に型式認定を受けている。
スズキは2017年3月21日、燃料電池二輪車「バーグマン フューエルセル」がナンバープレートを取得し、公道走行を開始すると発表した。2016年2月に国土交通省が公布、施行した燃料電池二輪車に関する保安基準に基づき、スズキはバーグマン フューエルセルの車両型式を申請。2016年8月に型式認定を受けた。
保安基準では、水素タンクが転倒時に路面と直接衝突しないこと、衝突時や追突時に他の部品と接触しないこと、一定の加速度が加わった時にガス容器が車両に固定されることを求めている。
小型軽量な空冷式で
2017年3月にバーグマン フューエルセルが18台、ナンバープレートを取得した。公道走行を開始し、燃料電池二輪車の市場性を確認する。水素の充填(じゅうてん)は、静岡県や福岡県の水素ステーションを活用するとしている。福岡県でスズキは、2011年から燃料電池二輪車の実証実験を行ってきた。関東圏での公道試験は現在調整中としている。
バーグマン フューエルセルは、街乗り向けの「バーグマン200」をベースに小型軽量の空冷式燃料電池を搭載した。燃料は圧縮水素。水素タンクはフレーム内に配置し、これまでのスクーターと同様のスタイルとしている。車両重量は199kgで、最高出力が4.5kW/7650rpm、最大トルクが23Nm/1870rpm。ベース車両のベーグマン200は車両重量が161kg。最高出力は14kW/8000rpm、最大トルクが17Nm/6000rpmとなっている。
後輪にインホイールモーターを採用している。燃料電池で発電した電力はモーターに使用し、加速時のアシストはリチウムイオンバッテリーに蓄えた電力を使用する。リチウムイオン電池モーターからの回生エネルギーはリチウムイオンバッテリーに充電する。水素タンクの容量は700気圧、10l(リットル)で、走行距離は時速60kmの定地走行で120kmとなる。
燃料電池を空冷式としたのは、数kW程度の出力であれば補機類を省略できるためだ。また、部品点数が少ないため、信頼性やコスト面でも有利になるとしている。酸素はフィルターを通した空気を低圧ブロアファンで送ることで供給する。
空冷式の燃料電池システムは、スズキと英国の燃料電池システム開発会社であるインテリジェント・エナジーの合弁会社が開発、生産する。合弁会社のSMILE FCシステムは2012年2月に設立、事業所はスズキの横浜研究室内に構えている。
スクータータイプは2009年にお披露目
スズキは2006年から燃料電池二輪車の開発に取り組んできた。2007年の東京モーターショーではコンセプトモデル「crosscage(クロスケージ)」を世界初公開した。クロスケージに搭載したのも、空冷式の燃料電池システムだった。この時からインテリジェント・エナジーの燃料電池ユニットを採用している。
2009年の東京モーターショーには、スクータータイプの燃料電池二輪車「バーグマン フューエルセル スクーター」を出展し、より現実的で身近なモデルとして提案した。強固なフレームに水素タンクを収めて安全性を高めた。
スズキは2010年2月からインテリジェント・エナジーと共同で、英国政府が主催する燃料電池車の実証実験に参加しており、バーグマン フューエルセル スクーターを使って実験を行っていた。
バーグマン フューエルセル スクーターは2011年に欧州統一型式認証「WVTA(Whole Vehicle Strategy Board)」を取得した。WVTAは、取得によりEU(欧州連合)の全ての加盟国での販売が可能となる認証で、燃料電池を搭載した車両としては二輪車、四輪車含め「世界で初めて」(スズキ)認証を取得した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 電気自動車が後付け部品で燃料電池車に、ベース車両はほぼそのまま
フランスのSymbio FCellは、「第13回 国際水素・燃料電池展」において、日産自動車の電気自動車「e-NV200」を改造した燃料電池車を紹介した。外部からの充電と水素の充填、どちらでも走行できる。 - トヨタの燃料電池車「ミライ」は「あえて4人乗り」、プレミアム感と走りを重視
トヨタ自動車は、セダンタイプの新型燃料電池車「MIRAI(ミライ)」を2014年12月15日に発売する。税込み価格は723万6000円で、国内販売目標台数は2015年末までで約400台。プレミアム感と荷室の広さ、そして走りの楽しさを重視したこともあり、5人乗りではなく4人乗りとなった。 - トヨタから1年遅れ、それでもホンダは燃料電池車を普通のセダンにしたかった
ホンダは2016年3月10日、セダンタイプの新型燃料電池車「CLARITY FUEL CELL(クラリティ フューエルセル)」を発売した。水素タンクの充填時間は3分程度、満充填からの走行距離は750Kmとし、パッケージングも含めてガソリンエンジン車とそん色ない使い勝手を目指した。 - バイオエタノールで走る日産の燃料電池車、「ミライ」「クラリティ」より低コストに
日産自動車は、バイオエタノールから取り出した水素で発電して走行する燃料電池車のシステム「e-Bio Fuel-Cell」を発表した。圧縮水素タンクや、白金など希少金属を使う触媒を必要としないため、トヨタ自動車の「ミライ」やホンダの「クラリティ フューエルセル」と比較してコストを大幅に低減できる。2020年に商品化する。 - トヨタの燃料電池車特許の無償公開に見る、4つの論点
トヨタ自動車は2015年1月6日に燃料電池自動車(FCV)の内外特許約5680件を無償公開すると発表しました。「なぜ特許を無償公開するのか」「なぜ2020年の期限付きなのか」「米テスラ・モーターズのEV関連特許開放との関連性」「ホンダとの協調の可能性」など4つの疑問点について、知財専門家が解説します。