HILSにプラントモデルを組み込む:いまさら聞けないHILS入門(8)(3/3 ページ)
車載システムの開発に不可欠なものとなっているHILSについて解説する本連載。今回は、エンジンと発電機のプラントモデルをHILSシステムの中に組み込んで、実機と同じように動かすための手順を説明します。
インジェクターサブモデル
インジェクターサブモデルは、連載第5回「HILSとプラントモデル(その1)」および連載第6回「HILSとプラントモデル(その2)」の通り、1サイクルの中で、インジェクター駆動パルスに対応して、インジェクターバルブから燃料を噴射します。この機能を確認するには、図3に示すように、モデルのインジェクター入力から回転数とインジェクターパルスのオン時間やタイミングを入力します。
統計プラントモデルを組み込んであるマップデータと同じデータが得られれば、HILSモデルが正しく作動していることを検証したことになります。
スロットルシステムサブモデル
スロットルシステムサブモデルは、連載第6回「HILSとプラントモデル(その2)」の「図5 スロットルアクチュエータの特性測定実験」の実機部分をプラントモデルに置き替えて実験することにより、サブモデルの機能を確認できます。
HILS内部の実験システムを図4に示します。バルブの初期位置を一定にしておいて何通りかのデューティー比の駆動パルスを一定時間インプットすることにより、バルブの動きを確認します。プラントモデルが正しく作動すれば、先述した連載第6回の実験と同じ結果が得られるはずです。
トルク発生機能サブモデル
エンジンの中心部分となるサブモデルです。このモデルの動作は、回転数と燃料噴射量に対して検証する必要があります。ここでも、統計モデルに用いたマップデータ測定試験と同じ方法で、回転数と噴射量についてのトルク出力を検証します。
回転部分のサブモデル
連載第6回「HILSとプラントモデル(その2)」で、エンジンと発電機の慣性モーメントを求める過程で、惰性回転試験を行いましたが、プラントモデルも同じ考え方で動作を検証することができます。検証は、エンジンと発電機を単独に切り離した状態でそれぞれの惰性回転試験結果と比較します。
さらに、エンジンに入力する燃料噴射量を変化してトルクを発生させたり、発電機負荷を徐々に増やすことにより、マイナストルクを発生することも可能ですが、対応する実機データを得ることは、簡単ではないので次回のECUを組み込んだシステム全体試験で検証するのが妥当です。
ECUを組み込んでHILSシステム全体の確認を行う
インタフェースとプラントモデルの検証を完了した段階でECUを接続して、システム全体の検証を行います。
ECUのダイアグツールにより、エンジン停止状態(回転数が0rpm)でも、スイッチや回転数、スロットル開度、水温などのHILSのセンサー値を変化して、ECUが検出している状態を確認できます。アクチュエータへの出力が可能な場合は、スロットルモーターやインジェクターへのパルス出力状態の確認も可能です。このように確認することによって、HILSインタフェースがより完全なものとなります。
次回は、システム全体を作動させて、基本的なテストを行うことにより、プラントモデルとECUを組み合わせたシステムが正しく作動しているか否かを検証しようと思います。
筆者プロフィール
高尾 英次郎(たかお えいじろう) 「HILSとTestの案内人」
1950年生まれ。岐阜大学機械工学科卒業。三菱重工で大型船のエンジン・推進装置などの修繕業務を担当の後、三菱自動車(現三菱ふそうトラック・バス)に転籍。エンジンの燃費向上・排出ガス低減研究、車両の燃費向上研究を10年余および電子実験、電子設計などを20年余担当。ITKエンジニアリングジャパンを経て、現在はHILSとHILS Testにフォーカスしたコンサルティングを行っている。
HILSとの関わりは、バス用の機械式自動トランスミッション開発中に、ECUのソフト検証用として1990年にMS-DOS PCを使ってHILSをゼロから自主開発して以来のもの。
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