IoT社会の到来で世界は変わる:IHS Industrial IoT Insight(3)(1/2 ページ)
今後の製造業の発展に向けて必要不可欠とみられているIoT(モノのインターネット)。本連載では、IoTの現在地を確認するとともに、産業別のIoT活用の方向性を提示していく。第3回は、エレクトロニクス産業の新たなけん引役としてのIoTにスポットを当て、その背景にあるメガトレンドや、関連する各国/産業分野の規制について解説する。
IoTの必然性
過去10年のエレクトロニクス産業をけん引してきたPC、タブレット、TVはすでにけん引役としての役目を終えている。スマートフォンも台数の成長は鈍化傾向になり始めており、市場は次のけん引役を求めている。「iPhone」だけでは長期的な成長は望めないことは明らかだ。
世界人口が72億人のうち、携帯電話機を所持する人口が幼児を除いた65億人として、買い替えサイクルを3年とすれば、年間出荷台数は21億台強になる。つまり携帯電話機の生産台数が21億台を大きく超えてゆくことは現実的でなく、次のけん引役として期待されているIoT(モノのインターネット)がいつから立ち上がるかを予測することが重要になってきた。
これまで半導体市場をけん引してきた電子機器(PC、携帯電話機、デジタル家電など)は、個人や会社が所有するものである。しかし、IoTはそれらを広範につなげて利用することを前提とした市場になる。つまりわれわれは、電子機器が“所有”から“利用”に変わるという時代の入り口に来ているのだ。けん引役がクルマや産業機器、インフラ、医療機器などに変わり、それらに求められる半導体も変わってくることが予想される。
次に、IoTが求められる要因分析をしてみたい。世界には「人口増加」「高齢化」「都市化」という3つのメガトレンドが存在する。これら3つのメガトレンドが引き起す、さまざまな問題を解決するためにIoTを普及させることが求められている。
メガトレンド1:世界人口は急増中
18世紀の産業革命以降、世界人口の増加ペースが早くなってきている。1900年に約16億人だった世界人口は1950年に約25億人となり、1998年には約60億人にまで急増した。特に第二次世界大戦後の増加が著しい。そして、2010年には70億人を突破し、2050年までに90億人、その後は増加のペースが鈍化していくものの2100年頃には100億人を突破するだろうと予測されている。
人口増加は資源不足や環境破壊を招き、電力不足という問題を引き起こす原因にもなり始めている。国連は、2012年に出した報告書の中で、世界で急増する人口の需要を満たすのに十分な食糧、水、エネルギーを確保するための時間がなくなりつつあると指摘している。世界人口急増と新興国経済の発展で中間消費者層が今後20年間で30億人増えると予測されており、資源に対する需要は飛躍的に拡大すると予想されている。2030年には、2010年比で食糧は50%増、エネルギーは45%増、水は30%増の需要になると試算されている。
メガトレンド2:先進国の高齢化
65歳以上が総人口に占める割合のことを高齢化率といい、この高齢化率が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」という定義になっている。
日本は1970年に高齢化率が7%を超え、1994年には14%を超え、2005年で20.04%と初めて20%を突破した。高齢者人口は今後も2020年まで急速に増え続けると予想されている。その後はやや安定するが、総人口が減少していくため高齢化率はさらに上昇し続けて、2015年には26.0%、2050年には35.7%に達すると見込まれている。日本人の3人に1人が65歳以上という「超超高齢社会」になるわけだ。
一方、世界の先進国を見ればほぼ同じ道をたどっており、日本はその先頭を走る国として注目を集めている。また、一人っ子政策の影響で中国が2030年頃には日本に次ぐ第二の高齢化国家になるとも予想されている。
メガトレンド3:都市化
世界的に都市部への人口集中が続いている。都市化率(都市部に住む人口の割合)は、先進国では2010年時点ですでに70〜80%に達しており、2050年には90%と大部分が都市に住むことになると予想されている。アジア・アフリカ地域は2010年時点では50%以下だが、都市への人口集中の速度は先進国を上回っており、2050年にはアジアが65%、アフリカでも60%近くまで都市化が進むと推計されている(国連統計)。それに伴い深刻化してきたのが、住環境の悪化や交通渋滞であり、地球環境面でも負荷が大きくなっている。
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