医療機器を市場に流通させるために必要なこと:医療機器開発のための薬機法解説(2)(2/3 ページ)
2014年11月に施行された医薬品医療機器等法、略して「薬機法」について、医療機器開発の観点から解説していく本連載。第2回は、医療機器を市場に流通させる際の規制などについ取り上げる。
4)医療機器の品質管理と安全管理について
医薬品医療機器等法第一条の目的には、「品質・有効性・安全性の確保」が掲げられていることからも分かるように、製品を市場に流通させるに当たって、品質や有効性、安全性をきちんと管理することが重要となりますので、その点についてお話しします。
医薬品医療機器等法の規制対象品目に対する品質管理の基準としては、「医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令」(平成16年9月22日厚生労働省令第136号)があります。これは「GQP省令(Good Quality Practice)」と呼ばれ、この省令への適合が製造販売業許可のための要件となってきました。
この省令は『製造販売時に製品の品質、有効性が保たれている』ことを理想としており、以下のような内容が含まれています。
- 総括製造販売業者・品質管理責任者の業務
- 製造業者との取り決め
- 出荷管理
- 品質管理のために作成しなければならない文書、文書と記録の管理
- 品質情報と品質不良の処理
- 製品回収時に行わなければならない業務
- 自己点検
しかし、薬事法から医薬品医療機器等法への改正により、「医療機器」および「体外診断用医薬品」※)の品質管理については、GQPによる体制から、「QMS省令(Quality Management System)」による体制へと移行が図られました。
※)体外診断用医薬品:専ら疾病の診断に使用されることが目的とされている医薬品のうち、人または動物の身体に直接使用されることのないもの(医薬品医療機器等法第二条第十四項)
QMS省令は、正式名称を「医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(平成16年12月17日厚生労働省令第169号)といいます。薬事法時代の平成17年改正の際に、医療機器の品質保証のための国際規格である「ISO13485:2003」を導入して構築されました。
薬事法時代には「製造業」が主体となってQMS省令を実施していましたが、医薬品医療機器等法となってからは「製造販売業」が主体となることとされました。
主な内容としては、
- 製造販売業者が確立・運用・文書化しなければならない品質管理監督システムの要求事項
- 作成しなければならない文書・記録とその管理
- 品質方針・品質目標
- 管理監督者の責任と権限
- 資源の管理監督
などが含まれています。
安全管理については、「製造販売後の安全管理の基準」として『製造販売後に製品が安全に取り扱われる』ことを理想とする「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令」(平成16年9月22日厚生労働省令第135号)があり、これを「GVP省令(Good Vigilance Practice)」と呼びます。
GVP省令への適合は製造販売業の許可要件となっており、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品が適用対象とされています。
主な内容としては、
- 総括製造責任者・安全管理責任者の業務
- 安全管理のために作成しなければならない文書、文書と記録の管理
- 安全管理情報の収集・検討
- 安全確保措置(廃棄・回収・販売停止・添付文書改訂・情報提供・報告など)の立案と実施
- リスク管理
- 市販後調査
- 自己点検
- 教育訓練
などが含まれています。
このように、医療機器の品質管理・安全管理については、それぞれ「QMS省令」「GVP省令」という基準に基づき製造販売業者が体制を整備し、管理業務を行います。
また、製造販売業者から委託を受けている製造業者においても、適切な製造管理・品質管理体制を整備する必要があるということになります。
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