車載用モーターの制御に伴うCPU負荷を削減、専用回路を内蔵したマイコンで:車載半導体
ルネサス エレクトロニクスは、電動車のモーター制御で必須となる演算の処理時間を従来比10分の1に短縮する回路技術を開発した。マイコンに内蔵した専用回路でこの演算処理を行うことにより、CPUでソフトウェア実行する場合と比べて演算処理時間を10分の1に短縮する。
ルネサス エレクトロニクスは2017年2月7日、電動車のモーター制御で必須となる演算の処理時間を従来比10分の1に短縮する回路技術を開発したと発表した。これまでモーター用ECU(電子制御ユニット)のCPUは、負荷は大きいが低レベル処理の演算にリソースを割かざるを得なかった。
開発技術は、マイコンに内蔵した専用回路でこの演算処理を行うことにより、CPUでソフトウェア実行する場合と比べて演算処理時間を10分の1に短縮する。これにより、CPUに余力ができ、モーターの制御をさらに効率化するアルゴリズムの制御を行うことも可能になる。製品化の時期は現在検討中としている。
CPUは手いっぱい
モーターの制御では、センサーで取得した電流値や角度値を基に次の制御周期の制御値を決定するフィールド指向制御演算、この制御値に基づくPWM出力が固定的な処理となる。
これらの処理はCPUにとって負荷が大きく、モーターを駆動と回生で使い分けたり、前後輪で別の駆動用モーターを使用したりする複数のモーターを対象とした制御ではさらに負荷が増す。複数モーターの制御の場合、同社の40nmプロセスの車載マイコンに搭載する動作周波数320MHzのCPUであっても処理性能の最大90%を使用するという。
今回の開発技術は、負荷の大きいフィールド指向制御演算とPWM出力を専用回路(IMTS:Intelligent Motor Timer System)で処理させるものだ。モーター制御専用のタイマー回路と密結合した構成とすることにより、タイマー回路で管理した制御周期ごとにCPUとは独立して自律的に処理できるようにした。
CPUの負荷を削減でき、演算処理時間はCPUでソフトウェア実行する場合と比べて10分の1となる0.8μsに短縮した。これにより、SiCパワーデバイスを使用したインバーター制御で行う、スイッチング周波数100kHz・制御周期10μsの高速スイッチングにも対応できる。CPUの余力は、モーターの効率を改善する高度な制御アルゴリズムに割り当てることが可能だ。
機能安全にも対応するため、CPUコアを二重化するロックステップデュアルコアシステムを用いてIMTSの内部を定期的に監視して故障を検知する方式とした。マイコンを2個使用したり内部回路を二重化したりするなどコストが増加する対策が不要で、CPUの負荷も2.4%に抑えられるという。
IMTSではモーターのセンサーの誤差をリアルタイムに補正する設定が可能な構成を採用した。CPUに追加の負荷をかけることなく補正処理を施すことができる。フィールド指向制御演算がより高精度になるため、モーターのエネルギー効率向上につなげられる。
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