パナソニックのIoT×家電事業にコーヒー焙煎の世界チャンピオンが協力する理由:イノベーションのレシピ(1/2 ページ)
パナソニックは、IoT×調理家電を活用した新たな食のサービス事業として、コーヒーの生豆を宅配し、その生豆に最適な焙煎を自宅で行える「The Roast(ザ・ロースト)」を発表した。焙煎の決め手になる焙煎プロファイルは、世界チャンピオンの後藤直紀氏が提供する。
パナソニックは2017年1月19日、東京都内で会見を開き、IoT(モノのインターネット)×調理家電を活用した新たな食のサービス事業として、コーヒーの生豆を宅配し、その生豆に最適な焙煎を自宅で行える「The Roast(ザ・ロースト)」を発表した。価格(税別)は専用のスマートコーヒー焙煎機が10万円、生豆パック(1種200g入り)が1カ月当たり3種セットで5500円、2種セットで3800円。サービス開始日は同年4月上旬だが、パナソニックのショッピングWebサイトPanasonic Storeで1月19日から事前予約受付を始める。月間の契約件数目標は100件。
ザ・ローストは「おうちで、極上のコーヒー体験」をコンセプトに、新開発の家庭用焙煎機「スマートコーヒー焙煎機」と、厳選した生豆の定期頒布、焙煎士による生豆に合わせた焙煎プロファイル(焙煎工程のプログラム)をセットで提供するサービス。現在、豆にこだわったスペシャリティコーヒーによるサードウェーブ(第3の波)コーヒーがブームになっているが、ザ・ローストによる自宅焙煎で「第4の波」を起こしたい考えだ。
生豆の定期頒布は、コーヒー輸入商社の石光商事が季節に合わせて世界各国のスペシャルティ豆を提供する。焙煎プロファイルは、2013年の「World Coffee Roasting Championship」で優勝した、豆香洞コーヒー(福岡県大野城市)のオーナー焙煎士である後藤直紀氏が、ユーザーに提供される生豆の特徴に合わせて作成する。特別な焙煎技術や知識がなくても、自宅で手軽に焙煎したてのコーヒーの味と香りを楽しめる「世界初のサービス」(パナソニック アプライアンス社 事業開発センター 所長の岩井利明氏)だという。
スマートコーヒー焙煎機は、業務用の焙煎機を手掛ける英国ベンチャーのIKAWAと技術提携することで、家庭用でありながら豆の特徴をきちんと引き出すためのきめ細かな温度と風量の制御を実現した。また、雑味の原因になるチャフ(生豆表面の皮)の除去には、サイクロン技術を応用し、豆の焙煎中に分離する構造とした。
焙煎機の操作は、基本的に専用のスマートフォンアプリの指示に従って行う。まずは、生豆の袋のQRコードをスマートフォンで読み込んで焙煎プロファイルを取得し、Bluetooth通信で焙煎機に送信。あとは生豆を焙煎機上部から投入し(1回あたり50gまで)、スタートボタンを押せば、予熱、チャフの分離、焙煎などは焙煎機が自動で行ってくれる。分離排出されたチャフを取り出せば、焙煎されたコーヒー豆が出てくる仕組みだ。焙煎時間は約15分となっている。
岩井氏は「ザ・ローストは、コーヒーのおいしさは生豆と焙煎で9割が決まり、今までわれわれが関わっていた抽出が1割しか寄与していないという事実を知り、そこでIoTを生かせるのではないかと考えて生み出した新たな食のサービス事業だ。サービスのグレードとしては松竹梅でいえば松のクラスになる。こういった食のサービスにどこまで需要があるかをしっかり見定めていきたい。次は和食系で何かできれば」と述べている。
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