つながるクルマは、ECUとワイヤーハーネスが少なくなる?:オートモーティブワールド2017(2/2 ページ)
Robert Boschは、自動車で無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)が可能になる「コネクテッドゲートウェイ」を2019年に製品化する。2023年以降には、コネクテッドゲートウェイにドメインコントローラーとしての機能も内蔵した「ビークルコンピュータ」を投入。演算処理能力はノートPCとそん色ない4万〜50万DMIPSを想定している。
ゲートウェイがノートPC並みに
コネクテッド化と同時に運転の自動化も進むため、車載ネットワークの通信は複雑になり、センサーなどから得られる情報量も増加する。パワートレイン、シャシー、ボディー、車載情報機器のそれぞれが系統を超えて連携することも不可欠で、情報のやりとりを“交通整理”するセントラルゲートウェイが必要になるとしている。
車外との通信には非対応ではあるが、複数のECUを統括するセントラルゲートウェイを2016年から量産している。セントラルゲートウェイの生産台数は同年で600万台。「普及率はまだ低い」(メーダー氏)というが、欧米や日本の自動車メーカーの量産モデルに採用されており、2018年には最低でも年産2000万個に上る見込みだ。
2019年には、OTA機能やデータの収集、ドメインコントローラーの統括を担うコネクテッドゲートウェイを製品化する。既に自動車メーカーと量産に向けた共同開発を進めている。2023年以降には、コネクテッドゲートウェイの演算処理性能をさらに高め、ドメインコントローラーの機能も含んだビークルコンピュータに進化させる計画だ。ビークルコンピュータは全ての領域の車載ネットワークを統合して管理するもので、自動運転に必要なアルゴリズムもその一部となる。
ビークルコンピュータの演算処理能力は4万〜50万DMIPSとなる見通しだ。メモリ容量は128GB、自動車向け機能安全規格ISO 26262のASIL Dに準拠させる。この性能は、実際に車両全体のドメインコントローラーを統合処理した動作検証に基づいて決めたものだという。「演算処理能力としては既に製品化されているレベルなので、車載仕様に堅牢化するのが今後の技術課題になる」(メーダー氏)。
ゲートウェイの高性能化に伴い、車両1台当たりのECU搭載数は減少すると見込んでいる。ワイヤーハーネスの使用量は15〜20%削減されるという。
ビークルコンピュータの実現は、当初の計画よりも5年早まった。「ドライバーがモバイル端末をクルマに持ち込むようになり、クルマがアップデートされないことの不満が強まった。こうした傾向が自動車業界の変化を推し進めたのが前倒しにつながった」(メーダー氏)。
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