連載
HILSとプラントモデル(その3):いまさら聞けないHILS入門(7)(3/4 ページ)
車載システムの開発に不可欠なものとなっているHILSについて解説する本連載。今回はエンジンの負荷となる発電機のプラントモデルを検討するとともに、これまで2回にわたって説明してきたエンジンのプラントモデルと組み合わせることを考えます。
プラントモデルの動作
以上で、エンジンのトルク発生モデルと発電機のトルク吸収のモデルができましたので、これを組み合わせてエンジンと発電機から成るシステムのコアの部分の動作を考えてみましょう。
図5にエンジン・発電機システムの回転速度増減に注目して、システムブロック図をまとめ直しました。
(1)電気負荷モデル
発電機の出力端子の電圧と負荷設定スイッチによって設定された負荷抵抗に電流が生じる。
- 例:1kWの電熱線式電気コンロ(電気抵抗=10Ω)を6台オンした場合に60Aの電流を消費
(2)発電機モデル
発電機出力電流が決まると、上記の図4(a)から、発電機がトルクを吸収する。
- 例:3000rpmで出力電流を40Aから60Aに増加した場合に、吸収トルクは-13Nmから-20Nmになる(吸収トルクは、マイナス)
(3)エンジンモデル
エンジンECUの出力により燃料噴射量が決まると、前回の連載第6回の「図2 エンジン性能マップ」の「(c)燃料噴射量トルクマップ」によりエンジントルクが発生する。
- 例:3000rpmで噴射量1mg/cycle・cylの場合に13Nmのトルクを発生
(4)エンジン・発電機の回転運動モデル
エンジンの出力トルクと発電機の吸収トルクが決まると、両者が一体となっている回転部分の慣性モーメントに働きかけて回転数を変化させる。
- 例:エンジンの回転部分慣性モーメントを0.06kgm2、発電機の回転部分慣性モーメントを0.09kgm2とすると、エンジン出力トルク13Nm、発電機吸収トルク-20Nmの場合、以下の式に基づいて回転加速度は-46.7(rad/sec2)、すなわち1秒間当たり445rpm減速することになる
HILSでこのプラントモデルをサイクルタイムごとに計算します。サイクルタイムを1msとすれば、現在の回転数3000rpmに対して1ms後の回転数は、
3000−445/1000=2999.555(rpm)
となります。
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