HILSとプラントモデル(その3):いまさら聞けないHILS入門(7)(2/4 ページ)
車載システムの開発に不可欠なものとなっているHILSについて解説する本連載。今回はエンジンの負荷となる発電機のプラントモデルを検討するとともに、これまで2回にわたって説明してきたエンジンのプラントモデルと組み合わせることを考えます。
発電機のプラントモデル
上記の仕様と機能要件を満たす発電機を、前回の連載第6回のエンジンと同様に仮想のベンチでテストして性能データを得ます。テストの方法は、通常の発電機のテスト方法とは異なり、エンジンのテスト方法に近いものです。
- エンジンを運転して、発電機回転数を低速から高速まで一定回転で作動させる
- 抵抗負荷を順次並列に接続して、出力電流を0Aから最大電流まで増加させる。端子電圧が維持できなくなるか、温度制限を限度値として最大電流を求める
- 各電流条件で、発電機入力トルク(=エンジン出力トルク)、回転数、発電機出力電圧、出力電流を記録する
- 回転数を変えて同様の計測を行う
架空のテストの結果、以下のデータが得られます。
(1)発電機最大電流出力時の出力と入力および損失
発電機最大出力と入力を図3に示します。出力電力は最大電流と電圧から、入力動力は最大電力出力時の入力トルクと回転数から求めます。最大出力は、50Hzおよび60Hzで共に定格出力(10kW)を上回っている必要があります。
入力動力と出力電力の差を発電機の損失とし、無負荷時の入力動力を機械的損失とすれば、発電機損失から機械的損失を減じることで電気的損失を分離することができます。
(2)部分負荷状態を含む発電機効率
図4に部分負荷時の発電機損失と効率を示します。
部分負荷の性能は、回転数ごとに負荷電流を0Aから徐々に増加して測定します。回転数とそれぞれの電流ごとの入力トルクを測定することによって、図4(a)の回転数、電流、入力のトルクマップが得られます。ここで、出力電力/入力動力を求めることにより、図4(b)の効率マップが得られます。
2400rpm以下のデータは、発電中の動作をテストするためには必要ありませんが、エンジン起動後にアイドリングから定格回転数に至る動作や発電終了後エンジンを停止する動作をテストするために必要です。
(3)慣性モーメント
発電機の回転部分の慣性モーメントは、前回連載で説明した惰性回転試験によりエンジンと同様に測定できます。
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