日本の製造業は大丈夫だ! 悔いや反省をバネに前を向く学生たち:車を愛すコンサルタントの学生フォーミュラレポ2016(3)(4/6 ページ)
晩夏の熱い戦い、全日本学生フォーミュラ大会(以下、学生フォーミュラ)から早くも4カ月。最後のピットレポートが年をまたいでしまいました。大変お待たせいたしましたが、お約束の通り4チームの様子を紹介させていただきます。
#51 上智大学(SOPHIA RACING)
続いては黒と赤のコントラストが美しいマシン、上智大学のピットです。お話を相島雄太さんにお聞きしました。
関 早速ですが今回の結果はどうでしたか?
相島さん 実はオートクロスの結果により、今日の午前中にエンデュランスを走る予定だったのですが、オートクロス走行時にブローバイガスが出すぎていることが分かり、このままエンデュランスを走ると2〜3周でトラブルが出て、同じ組で走るチームに迷惑を掛けることになるので、走行を断念しました。
関 それは苦渋の決断でしたね……でも勇気ある決断です。安全は全てに優先するのだから。でもこのチームはエンデュランスをキャンセルしたり、こんなに重いゼッケンナンバーを付けたりするチームではないよね?
相島さん はい、きっちりと走れば間違いなく上位に入るマシンです。空力デバイスもかなり手を入れました。
関 確かにフロントウイングからサイドスカート、リアウイングと空気の流れが見えるようですね。
相島さん はい、CFD(数値流体力学)をシミュレーションして作り込んでいます。でもまだ風洞実験の結果を計算結果と照合させるところまではやっていないので、そこはこれからの課題です。
関 さすがですねぇ……シミュレーションソフトは完璧な絶対値を出してはくれませんよね。「AとBのどっちがいい?」ということは分かるけど、「じゃあ本当に数値はどうなのよ?」ってことまではやってくれない。だから、シミュレーション結果と実際のデータを突き合わせて、シミュレーションソフトのパラメータをいじって徐々に昇華させていく。それが重要なのです。そこを分かってないエンジニアって結構いるんですよ。CAEの結果を鵜飲みにしてはいけない。
ここでチームリーダーの大津悠作さんが登場しました。
関 先ほど伺ったのですが、エンデュランスをキャンセルしたのは勇気ある決断でしたね。
大津さん スポーツマンシップとして当然だと思っています。わがチームのドライバーはもちろん、一緒に走るチームの安全を考えたら今回は出走できないと判断しました。
関 素晴らしい判断です。心から敬服します。話は変わりますが、前回のマシンと比べてどこが変わったのですか?
大津さん 一言でいうと熟成ですね。例えばエアロデバイスを固定しているビスの径を5mmから4mmに変更しています。リアウイングは50%の軽量化に成功。ちょっと見にはあまり変わっていないようですが、まさに熟成を進めています。車両重量では180kgから175kgと5kgの軽量化を達成しました。エアロデバイスだけではなく、各班の努力の積み重ねの結果です。車両製作のタイミングも早くなりました。前回はシェイクダウンが7月だったのですが、今回は5月に行えました。早い時期から走り始め、距離を重ね問題点を出しそれを1つ1つつぶして行く、その結果オートクロスではいいタイムが出せたのではないかなと判断しています(60秒811で出走70チーム中11位)。
関 上智大学というとどうしても藤本さんを思い出しちゃって。彼が乗ると完走できないというジンクスが結局続いちゃいましたよね。でもマシンは素晴らしいし、彼のドライビングテクニックも凄かった。今までの先輩たちが培ってきた伝統を生かして、レギュレーションが変わる2017年の大会に向けてぜひまた素晴らしい走りを見せてください。今までエンジンはYAMAHA WR450ですよね? 次は何を載せるか考えていますか?
大津さん WR450が生産中止になるそうですが、その後継機にしようかなと思っています。
関 YAMAHAエンジン使うならMT-07がお薦めですよ!私がつい先日まで乗っていたので間違いないです(ここでもまた薦めている筆者 笑)
大津さん U.A.S.GRAZのエンジンも2気筒の直噴ターボらしいですから、このコースに向いているかもしれませんね。
関 まぁ、たわ言として覚えておいてください。どうもありがとうございました!
上智大学はエンデュランス審査にこそ出走できませんでしたが、デザイン審査やオートクロス審査で好成績を収め、総合32位と前回の54位から順位をあげました。そしてICV最軽量賞も受賞、次回大会の大活躍を予感させますね!
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