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“光のプロ”の遊び心が産んだ反射率99%ミラー――吉城光科学オンリーワン技術×MONOist転職(7)(3/3 ページ)

日本の“オンリーワンなモノづくり技術”にフォーカスしていく連載の第7回。今回は、超精密ガラス部品で世界的に高いシェアを持ち、常識を覆す超高反射ミラーなど特殊技術を有する吉城光科学を紹介する。

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ガラス+樹脂で新たな強みも

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 自由な発想や柔軟性はガラス部品に留まらない。「各工場で、それぞれ特徴ある新しいことをやる」(吉田氏)という考えで、東莞の工場では樹脂の真空成形によって、ブリスターケースの設計、製造も始めた。現在は自社製品のパッケージに使用しているが、外販にも広げる計画だ。またハノイの工場では、顧客から請われたことがきっかけで樹脂の射出成形も行うようになった。上海では、撥水性、耐久性を高めるフッ素加工に向けて準備を進めている。

 まったく新しい分野は立ち上げのコストがかかりそうだし、特に樹脂の成形は多くの競合がありそう。しかし吉田氏は「設備費はガラスに比べれば10分の1程度ですし、もともとガラス以外にも着手したいと考えていましたから。既にお取り引きのある企業なら、重いガラスと一緒に運ぶので運送費は必要ありませんし、管理部門などは共通ですから、プラスの経費はほとんどかからないのです」という。逆に樹脂加工からは参入しにくいガラスを強みに、ガラスと樹脂のインサート成形も手掛けたいという。

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 超精密ガラスで今後力を入れたいと考えているのは、自動車のHUD(Head-Up Display)だ。同社にとってはプロジェクター部品の技術の延長線上に位置し、2017年夏頃から量産が始まる。「特に自動車や航空機などでは、割れない、軽いなどの理由から樹脂に移行している部品もありますが、耐久性はガラスの方が優れていますし、軽く、薄く、強度の高いガラスなど技術も進んでいます。ガラス部品は、光があるところにはまだまだ可能性があると思っています」と吉田氏。光を知り尽くした吉城光科学は、高い技術力と柔軟性、技術者の発想を大事にする社風を持った、キラリと光るオンリーワン企業だった。


筆者紹介

杉本恭子(すぎもと きょうこ)

東京都大田区出身。

短大で幼児教育を学んだ後、人形劇団付属の養成所に入所。「表現する」「伝える」「構成する」ことを学ぶ。その後、コンピュータソフトウェアのプログラマ、テクニカルサポートを経て、外資系企業のマーケティング部に在籍。退職後、フリーランスとして、中小企業のマーケティング支援や業務プロセス改善支援に従事。現在、マーケティングや支援活動の経験を生かして、インタビュー、ライティング、企画などを中心に活動。


取材協力:マイナビ)

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