これができると劇的に変わる! 発想を広げるためのコツ:“イノベーション思考”で発想が変わる!(3)(1/2 ページ)
発想を生み出すためには「考え方の技術」がある。コツの解説と演習を通じてその技術を身につけてもらおうという当連載。今回は有用なロジックツリーを作成するため=発想を上手に広げていくためのコツをお伝えします。
前回はロジカルシンキングにおける基礎中の基礎、「MECE」についてお伝えしました。あらためて見てみると、日頃から意識してできている、と言える方は少なかったのではないでしょうか。
さて、あらためて“ひらめきを生み出すための大前提”を振り返ってみると、それは「抽象度をそのままに物事を考えないこと」です。1つのテーマに対し、自身の得意な分野や常識、過去の成功体験だけを軸にして思いつくままに考えてしまうと、新たな発想は導けません。その「考え方のクセ」を強制排除するためにはテーマを丁寧に細分化した上で、そのひとつひとつの枠組みの中で考える必要があります。
丁寧に構造分解をする際のポイントとして用いるのが前回お話しした「MECE」ですが、細分化する際には考え方の可視化が不可欠です。目的は2つあります。
- 自身の思考をアウトプットして向き合うことで、自分が気付かなかったところ、不足していたところなどのクセに気付く
- 導き出したソリューションを分かりやすく説明する
その可視化ツールが前回も作った「ロジックツリー」です。今回は、ただ「MECE」であるだけでなく、効果的で有用なロジックツリーを作るためのコツをお伝えします。
より重要な切り口を見極める
あなたは旅行代理店で企画職を担当しています。今年、従来にない新たなサービスを生み出すために、まずは「旅行」という概念を分解して考えることにしました。
大きな切り口として2つ浮かぶと思います。1つは「国内と海外」、もう1つは「法人と個人」。両方とも「MECE」としては問題ありません。
どちらの切り口から分解していくか。これはその代理店がどのような特色を持っているかで変わってきます。法人・個人にかかわらず、国内へのサービス提供が事業のほとんどを占める企業は「国内と海外」を上位に。そして国内・海外にかかわらず、法人へのサービス提供が多い企業は「法人と個人」から分解し始めた方が、より効率的で考えやすいロジックツリーを作ることができるはずです。何が重要な切り口となるかは、そのテーマの性格による、ということを覚えておいてください。
よく聞く「調達部・製造部・営業部」「ヒト・モノ・プロセス」は下位レイヤーに
切り口の考え方についてもう1つの例題を見てください。
「PC関連商品の在庫過多を減らすには?」というテーマに対して、「調達部にできること」「製造部にできること」「営業部にできること」という形で分類されています。部署で区切ればモレることもないし、ダブることもない。「良い感じ」なロジックツリーと思われるかもしれませんが、実はこれではイノベーションは生まれません。このロジックツリーから、デル社のような“お客さまの要望に合わせたPCをオーダーメイドで作る”というイノベーションは生まれるでしょうか。
部署というものは既存のサービスを実現するための役割です。どこの部署が何をするかなんて、後で決めればいいのです。大事なのは「何をするか」。デル社であれば「オーダーを受けてから、その通りのスペックを組み立て出荷する」という取り組み自体が大事なのであり、どの部署が何をしようということは二の次なのです。既存サービスのための部署を前提としてしまってはイノベーションは生まれません。
同じく、「ヒト・モノ・プロセス」も上位レイヤーには適しません。実現方法や手段などの「どうやってやるか」は最も重要な切り口ではありません。テーマを実現・解決するために、何を行うのか。何が行われていればそれは解決できそうなのか。それを上位レイヤーに設置し、思考を分解していくことが必要です。
では、先ほどのテーマを重要な切り口から分解してみましょう。
このような形であれば、「顧客のニーズにマッチした商品企画」の下位に「そもそも顧客に商品スペックを決めてもらう」という発想を導き出すことができ、デル社のオーダーメイドのアイデアへとつながります。しかし、フレームワークに当てはめないで考えるというのは難しいもの。モレがあるのかが判断しづらいし、本当にこれを広げていけば革新的な発想を生み出すことができるのか、不安にもなります。
けれど、ビジネスの戦略や新しいサービス・製品を論理的に生み出すには、この切り口を考えることが非常に重要なのです。
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