2つのインターネットモノづくりで、メーカーの商品企画段階から介入し開発プロセスを革新する:Makuake 木内氏、プロトラブズ新社屋を訪問
商品企画段階からの介入、資金調達後の販売や事業拡大に関するサポートも手掛けるクラウドファンディングサービス「Makuake」と、インターネット上の試作・小ロット専門メーカー「プロトラブズ」、2つのインターネットモノづくりが、商品開発プロセスの革新を力強く後押しする。Makuakeを取り仕切る木内文昭氏は、その革新において大事なことは「意思決定の迅速化」だと語る。
サイバーエージェント・クラウドファンディングが運営する「Makuake」は2013年8月に開設して以来、ユニークなヒット商品の数々を世に送り出してきた。今回はMakuakeを取り仕切るサイバーエージェント・クラウドファンディング 取締役の木内文昭氏がプロトラブズの新社屋を訪問。今回は特別に工場内部を、プロトラブズ 社長のトーマス・パン氏が自ら案内した。
>>木内氏とパン氏の対談:クラウドファンディングは可能性いっぱいのモノづくりインフラ
2016年8月、プロトラブズの日本法人は社屋を神奈川県大和市の建物から同県座間市のマルチテナント型物流施設の一角に移転。敷地面積は従来の3倍に拡大し、工場に備えるCNCマシニングセンタや射出成型機も増強し生産能力も大幅に向上させた。近年の日本における需要拡大に対応するための移転・増強である。
敷地を見渡して、その広さに驚く木内氏に、「工場に人があまりいないでしょう(笑)」とにこやかに案内するパン氏。工場の中に人が少ないのは、同社のビジネスプロセスがICTで徹底的に統合管理され、加工作業も極力自動化されている現われである。これら設備が、無料かつ素早いオンライン自動見積もりを実現し、短納期で顧客の元に製品を届けるカラクリである。
Makuakeは商品開発の資金調達のためのプラットフォーム提供という枠を飛び越え、商品企画段階からのサポートや資金調達後の販売や事業拡大に関する支援も手掛ける。「Makuakeのモノづくりパートナーとして、プロトラブズはとてもぴったりくる」と木内氏は述べる。
Makuakeプロジェクトから生まれる製品の生産ロット数は多くても1000〜3000台程度だ。また資金調達が完了すれば、いち早く支援者の手元にこだわりの商品を届けなければならない。試作と小ロット生産を専門とするプロトラブズならクラウドファンディングで企画される商品の生産サイズやビジネススタイルにとてもマッチしており、しかも高品質な商品を素早く支援者の元に届けられる。
商品開発の意思決定プロセスを大きく変えよ
「ここ10年で日本でもインターネットが普及し、自分の個性に合ったものを自分で探せる時代になりました。そこに身を置く人たちは、商品を買う前には、必ずインターネットで吟味します。『たとえ日本で数台しか売れなくても世界で1000台売れればビジネスとして成り立つ』と考え、市場に素早く商品を送り出すという動きは、実際に家電ベンチャーなどでもありました」(パン氏)。
クラウドファンディングといえば、クリエイターやスタートアップなど、個人や小規模な企業が利用するイメージが強い。ところがMakuakeでは大手企業によるプロジェクトが目立つ。最も記憶に新しいところでは、JVCケンウッドによる「音楽ファンに贈るイヤホンの新体験」と題したプロジェクトがある。2016年7月12日にプロジェクト開始して以来、順調に支援者と資金を集め、2016年10月28日に無事終了。1200人以上の支援者と2000万円を超える資金を集めた。
このプロジェクトが、まさに日本メーカーが今後歩むべき道の1つを示した。たとえ最終的に考えている仕様が最後まで完成していなくても、商品の最終製造原価や品質などの見通しが立った段階で市場に出し、ユーザーの要望を聞きながら、さらに商品を作り上げていく――1年以上かけて設計、試作、量産準備、市場投入と駒を進めてきた、これまでのメーカーによる一般的なモノづくりプロセスとは大きく異なる。
木内氏が繰り返し説くのが、「商品開発における意思決定を加速化すること」の重要性である。またプロトラブズのスピーディーなプロセスを利用すれば、そこを力強く後押しすることが可能となると同氏は考える。
メーカーが商品開発を前へ進める過程で、ディスカッションや承認プロセスが入るたびにつまずいてしまう。「社内で承認を得ることは重要だが、社内調整に時間が取られて本来割くべきユーザー価値に向き合えていない例は往々にして見受けられる」と木内氏は言う。
「日本のメーカーは商品の作り方や意思決定プロセスを従来の方法から大きく変えていかなければ、競争力がなくなっていく可能性もあるのではないでしょうか」と木内氏は危惧する。その一方、「現場のリーダー(部課長クラス)たちは皆、そのことを理解しています」とも述べる。
問題は、そのさらに先にいる経営層の心を大きく動かすことである。任期満了間近、自身のキャリアに波風を立てないよう保守的な立場を守ることに終始してしまうなど、経営層の誰かが思い切った決断を躊躇(ちゅうちょ)してしまうケースがよくあるという。木内氏は、自分たちの進退を賭け、そんな経営層の心を動かすべく戦う現場リーダーと出会ってきた。
パン氏は自身の経営者としての経験を振り返りながら、「経営者は独断せず、役員を招集して判断します。また役員は皆、技術を熟知しているわけではありません。企画書を読んだところで、製品についてきちんと理解できないものです。実は、『お前に任せる』と、リーダーの努力や熱意、人となりに心を動かされ、最終的に決断するものだったりもします」と述べる。
「確かにそうですね」と木内氏もそれに同意する。「商品に込められた熱意や細部にこだわっている感じって、Makuakeのユーザーにも伝わると思っていて、それが売り上げにも確実に影響していると思っています」。
「意思決定する側から考えると、企画書だけの提案よりも具体的なモックアップがあった方が確実に判断しやすくなると思います」と木内氏は言う。実物を体験すれば、たとえ技術的なことが深く分からなくとも、その商品の良さが理屈抜きで、「これはいいね!」と直感的に伝わる。「このようなモノが、プロトラブズですぐに製作できること」そのものに感動する人もいるかもしれない。
プロトラブズは創業以来、さまざまな加工法に対応してきた。2016年10月から、二色成形(軟質・硬質材料の一体成形)に対応。さらに2017年以降には、3Dプリンティングのサービスを開始し、樹脂と金属の積層造形に対応する予定だ。これまで以上に、作れる製品の幅、すなわちモノづくりビジネスのチャレンジの幅がより広がることになる(関連記事:プロトラブズの日本法人、2色成形やステンレス加工、3Dプリンティングのサービスを新たに開始)。
「日本のメーカーは能力が高い人が多いですから、パチッとギアが入った時にはものすごい馬力が出ることを、多くの企業とお付き合いしていて感じます」(木内氏)。
Makuake発の新製品とプロトラブズのモノづくりが、日本メーカーにおける商品開発プロセスの革新を力強く後押しすることを大いに期待したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
関連リンク
提供:プロトラブズ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2016年12月23日