“次の100年の礎”に、ヤンマーのIoT戦略は「B2B2M2C」:製造業×IoT キーマンインタビュー(4/4 ページ)
ヤンマーは、農機の見守りサービス「SMARTASSIST」や自動運転トラクター「ロボトラ」をはじめ、農機のIoT(モノのインターネット)活用に積極的に取り組んでいる。同社のCIO(最高情報責任者)として、農機のIoT活用をはじめさまざまなIT戦略を推進している矢島孝應氏に話を聞いた。
ITに求められる役割は中の重たさを排除すること
MONOist 製造業の情報システム部門やCIOを長年担当してきたわけですが、製造業におけるITをどのように捉えていますか。
矢島氏 ITに求められる役割は中の重たさを排除することだ。空気を入れたボールを考えると分かりやすい。ボールの中にある空気自身は価値を生まない。ボールの外側の部分が価値を生んでいる。ITの価値は、ボールの中をいかに軽くできるか、顧客に接する外側の部分をどれだけ充実させられるかにある。
現在、IoTというトレンドによって製造業は曲がり角を迎えている。ここで製造業がIoTを活用する上で重視すべきは「顧客にどう喜んでもらうか」だ。これまでのように良いモノを提供するだけではダメ。
ヤンマーは2016年春から、「最大の豊かさを最小の資源で」実現する「A SUSTAINABLE FUTURE」をテクノロジーコンセプトに据えた。これからは、モノを供給するだけではなく、顧客の喜びに積極的に関わっていく。IoTは、そのために必要な手段であり、顧客がもうかるための情報収集システムだ。
今後は、製造業から、さらに一歩踏み込んだIoT活用サービスが出てくるだろう。GEは航空機エンジンの製造や販売を行っているが、IoT活用により予防保全に乗り出したことは有名だ。しかし、将来的にはそれにとどまらず、航空会社にフライトスケジュールを提供するようになるかもしれない。また、建機メーカーであるコマツも現在「スマートコンストラクション」というICTを活用した新たな建設の在り方を模索しているが、将来的には建設計画までもコマツが請け負うようになるかもしれない。
ヤンマーも単なるモノの提供だけでなく、その上でどのような付加価値がもたらせるかを検討し、これらの企業と同様の方向を目指せるよう、取り組みを加速していきたい。
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