“次の100年の礎”に、ヤンマーのIoT戦略は「B2B2M2C」:製造業×IoT キーマンインタビュー(3/4 ページ)
ヤンマーは、農機の見守りサービス「SMARTASSIST」や自動運転トラクター「ロボトラ」をはじめ、農機のIoT(モノのインターネット)活用に積極的に取り組んでいる。同社のCIO(最高情報責任者)として、農機のIoT活用をはじめさまざまなIT戦略を推進している矢島孝應氏に話を聞いた。
ITをグローブとバットに例えると……
MONOist IoTのサービス活用についてはどのような取り組みを進めていますか。
矢島氏 効率化のITだけでなく、売りを作るITも必要だ。野球の道具を例に考えてみた場合、3割捕球できるグローブはダメだが、3割打てるバットはアリだ。これまでのITはグローブの世界だったが、これからはバットの世界で使っていくべきだ。これが、守りだけやっているCIOと攻めのCIOの違いになるだろう。そしてIoT活用こそが、売りを作るITになる。
IoTを活用すれば、マシンデータを介して顧客の情報をつかむことができる。農機をはじめとする当社製品のメンテナンスも、タイムベースからコンディションベースに変えられる。例えば、農機が扱う農作物は、収穫タイミングが極めて重要で、日単位でのずれが大きく収穫の質や量に影響する。IoTを活用した予防保全で突然の故障を防止できれば、収穫を安定して得られる。これまでの農機はB2B(Business to Business)の製品だったが、農機のマシンデータを介して顧客とつながることで「B2B2M2C(Business to Business to Machine to Customer)」になるだろう。
このB2B2M2Cを体現しているのが農機見守りサービスのスマートアシストだ。各農機にSIMカードを装着して通信することにより、顧客が気付かないことに気付くことができる。予防保全はもちろん、稼働状況の見える化に加えて、GPS情報を基に設定区域外から出たときに警報を出す盗難防止などの機能も備える。農機の価格は高級車並みで、実は盗難に遭いやすいこともあって、盗難防止機能は好評だ。
MONOist このスマートアシストと連動するサポートセンターの体制も変更したと聞いています。
矢島氏 従来は、農機や建機など製品ごと、地域ごとで対応していたサポートセンターを、365日24時間対応の「リモートサポートセンター」に統合した。スマートアシストの盗難防止機能は、24時間稼働しているリモートサポートセンターがあるからこそ提供できるサービスになるだろう。
昼間に動かすことが多い農機だけを考えると、24時間対応のリモートサポートセンターの効率はあまり高くないと感じるかもしれない。しかしヤンマーは、夜間利用が多い建機も手掛けており、リモートサポートセンターはこの建機のサポートも行っている。農機も建機も手掛けるヤンマーだからこそ、リモートサポートセンターでの相乗効果が得られたといえるだろう。
スマートアシストやリモートサポートセンターに加えて、自動運転ロボットトラクターであるロボトラの取り組みも進めている。農地の集約化/大規模化が進む中で、農作業を高効率化できる手段として期待されている。ロボトラの開発も、スマートアシストで培ったSIMカードやGPSの技術があってこそだ。
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