脳科学の知見を活用した強化学習の共同研究を開始:人工知能ニュース
富士通研究所と沖縄科学技術大学院大学は、脳科学の知見を活用し、人間のように応用力のある強化学習アルゴリズムを開発する共同研究を開始した。従来の強化学習では人の手で調整していた部分もAIが自律的に調整できるようにする。
富士通研究所と沖縄科学技術大学院大学(OIST)は2016年10月12日、脳科学の知見を活用し、人間のように応用力のある強化学習アルゴリズムを開発する共同研究を開始すると発表した。
強化学習は、試行錯誤を通じて環境に適応した行動選択方策をコンピュータに獲得させる手法だ。現在、AI(人工知能)技術の中でも注目されているが、情報をあらかじめ設計者が指定したり、問題ごとに学習をやり直したりする必要があるため、実社会での適用が限られることが課題となっていた。
今回の研究では、人間の脳の学習方法に着目。最新の脳科学のメカニズムを強化学習アルゴリズムに取り入れ、人間のように応用力があるAIの開発を目指す。これまでは人の手で調整していた部分も、AIが自律的に調整可能となるような強化学習アルゴリズムを開発する。
具体的には、「動的に変化する大量データの中から強化学習に適した情報を自動的に抽出する技術」「過去の経験を別の問題の行動選択方策へと生かす転移学習技術」「複数の方策から状況に応じて行動を選択する協調・並列強化学習技術」の、3つの分野において新技術を開発する。OISTの研究チームは、脳科学の観点から神経計算機構を数理モデル化し、富士通研究所は、最適化や制御工学の観点からアルゴリズムを考案する。同研究所では計算資源を最大限活用する実装手法の開発も計画している。
富士通研究所とOISTは、将来的に共同研究の成果を元に、ICTシステム管理、エネルギーマネジメントなどの応用において、環境に適応した方策を人手に頼らずコンピュータに獲得させるAIソリューションを開発していくという。
関連記事
- 人工知能は製造現場でどう役に立つのか
人間の知的活動を代替するといわれる人工知能が大きな注目を集めている。ただ、製造現場で「使える」人工知能は、一般的に言われているような大規模演算が必要なものではない。「使える人工知能」に向けていち早く実現へと踏み出しているファナックとPFNの取り組みを紹介する。 - 第4次産業革命って結局何なの?
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。しかし、そこで語られることは抽象的で、いまいちピンと来ません。本連載では、そうした疑問を解消するため、第4次産業革命で起こることや、必要となることについて分かりやすくお伝えするつもりです。第1回目はそもそもの「第4次産業革命とは何か」を紹介します。 - 製造業IoTに新たなデファクト誕生か、ファナックらが人工知能搭載の情報基盤開発へ
ファナックやシスコシステムズら4社は、製造現場向けのIoTプラットフォームとして「FIELD system」を開発し、2016年度中にリリースすることを発表した。競合メーカーの製品なども接続可能なオープンな基盤とする方針。製造業IoTでは各種団体が取り組むが、ファナックでは既に製造現場に350万台以上の機器を出荷している強みを生かし「現場発」の価値を訴求する。 - 熟練技術者のスキルを8時間で獲得、ファナックが機械学習ロボットを披露
ファナックは「2015 国際ロボット展」で、Preferred Networks(PFN)と提携して開発している産業用ロボットへの機械学習の適用事例を披露した。機械学習により熟練技術者が数日間かかるティーチングの精度を、8時間で実現したという。 - 製造業で人工知能はどう使うべきなのか
日本IBMとソフトバンクは、自然対話型人工知能「ワトソン(Watson)」の日本語版の提供を開始する。自然言語分類や対話、検索およびランク付け、文書変換など6つのアプリケーションをサービスとして展開する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.