円高円安が激しく入れ替わる中でのモノづくりの目指す姿:鈴村道場(4)(2/4 ページ)
トヨタ生産方式の達人・鈴村尚久氏による連載コラム「鈴村道場」。今回は、円高や円安など、為替レートが激しく入れ替わる中でのモノづくりの目指すべき姿について解説する。
モノづくりのあるべき姿を実現するためのポイント
多品種少量が当たり前の現在では、同じ商品群でも自社で扱っている売上構成は大きく次の2つに層別されます。
1つは小品種大量品のゾーンで、もう1つは多品種少量品のゾーンとなります。
前者だけで商売ができれば苦労はしませんが、そうは行きません。どちらのゾーンも必ず存在し、管理をしていかねばなりません。
そうした場合に一般的には「少品種大量品⇒内製」で、「多品種少量品⇒外製」で役割分担をしている企業がほとんどです。
私は次のような役割分担に見直すべきだと思います。
- 小品種大量品の内の毎月固定量⇒外製
- 多品種少量品、少品種大量品の内の変動分⇒内製
ここで話を理解しやすくするために各種の定義について補足説明をします。
内製/外製の定義
内外製は次の定義となります。
- 内製:自社のリソースで生産する
- 外製:子会社(資本50%以上)、関係会社(資本30〜50%未満)、自社の依存率が高い資本の入っていない仕入先、自社の依存率が低い資本の入っていない仕入先で生産する
外製の対象品の定義
外製を選択する条件は大まかに次の2つに分かれます。
- 自社で作る技術がない (例)自動車メーカーにとって鉄板は高炉メーカー、タイヤはタイヤメーカー、電池は電池メーカーなど
- 自社で作れるが、生産の総量が自社のキャパを超えているため、コアとして大切な仕事に競争力を確保できる品種に自社は特化し、それ以外を外部に委託する。リソース確保が目的
本稿での外製については、上記2.の対象品を生産する、子会社や関係会社、自社の依存率の高い資本の入っていない仕入先にフォーカスして説明をします。
本題に戻りますが、企業の競争力の確保は「魅力ある商品開発」と同じぐらいに「ものをうまく作って回す」ことが重要なのです。
「ものをうまく作って回す」とは、言い換えると「予想通り売れないものを少ない在庫で即納し続ける」ことです。
私が常日頃から重視している3つの視点「質・量・タイミング」のうち「タイミング」の部分となります。
生産をコントロールしやすい、少品種大量品の固定量は外製で、多品種少量品および少品種大量品の変動量は内製にすべきです。
また、内製のリソースが極端に不足している場合は「場内外注」という手法をとって工夫している企業もあります。
場内外注とは、自社の工場内で外注先のリソースを使って物を生産する形態です。取引は加工した分の賃金を支払いすることになります。
通常の外注先に比べた場合のメリットは次の通りです。
- トラックでなく、フォークリフトや台車で運搬ができる(輸送のムダの排除)。言い換えると、定量不定時運搬が可能となり、工程間のレスポンスが早くなり、在庫が少なくなります。「目で見る管理」をキチンとすれば、所有数を移転させなくても良いので棚卸も不要となります(在庫のムダの排除)
- 逆に外注先の場合は、どうしても定時運搬になり、輸送に伴う荷物の上げ下ろし作業や送り状の作成、発注/検収/支払などの間接業務が大量発生し、定時間の間に在庫がたまることとなります
これを避けようとすると多頻度運搬が必要とされます。ところが、そこで表面的な物流費を惜しんで1日1回や1週間1回の低頻度の運搬を採用しようとします。これが間違いのもとです。
輸送間隔が短ければ、輸送の走行距離と上げ下ろしの作業が増えるという発想があります。これが一般的な思い込みによる『常識』と呼ばれるものです。
実はこれ自身が事実とは反することが多いです。よくよく見てみると、一般的な工業製品のユーザーとサプライヤの間では、品目別に別便で分けてしまって(1日8便の内あるものは1、3、8便目、あるものは2、4、6、7便目など)輸送していることが多いです。従って、もともと多頻度でできるものを低頻度にしてしまっているのです。
近場のサプライヤ同士が協力することによって「ミルクラン」と呼ばれる方法で多頻度化することもできます。この方法をとると、操業度の増減によって便を増やしたり減らしたりすることが簡単に可能になります。
大事なのは、面倒な部分を外部に丸投げするのではなく、自社が主体で現場指導の教育を行い⇒改善を継続し⇒競争力確保につなげることにあります。
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