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サークル活動と甘く見るな! 学生フォーミュラは企業も顔負けのモノづくり対決車を愛すコンサルタントの学生フォーミュラレポ2016(1)(2/5 ページ)

車とバイクが大好きなモノづくりコンサルタントが「全日本学生フォーミュラ大会」をレポートします。第1回は審査のクライマックスでもあるエンデュランスです。数々の審査で好成績を収めた6校が20周の合計タイムを競います。マシンからはさまざまな設計思想が垣間見え、速さを競うだけではないモノづくり対決であることが分かります。

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大会のハイライトはエンデュランス審査

 今回観戦したのは競技(オフィシャルには審査と言います)の最後を飾る大会の華、エンデュランスの午後の部です。大会3日目に行われた「オートクロス」(約800mのジムカーナ的レイアウトのコースを1周、最大4回走ってそのベストタイムを競う)の上位6チームによる対戦です。

コースレイアウトとおおよそのルール。見どころはマシンの基本性能だけでなく、ドライビングテクニックやドライバー交代などさまざまです
コースレイアウトとおおよそのルール。見どころはマシンの基本性能だけでなく、ドライビングテクニックやドライバー交代などさまざまです(クリックして拡大) 出典:自動車技術会

 このコースを2チームが同時に走ります。先にスタートした1チーム目がほぼ半周を走ったとき2チーム目がスタートする形式です。

 見どころはたくさんあります。加速や制動力、コーナリング中の安定性などマシンの要素。コースを構成するパイロンに触れると1回当たり2秒のペナルティが課されますので、ドライビングテクニックも相当に高いレベルが求められます。

 10周すると一度ピットエリアに戻りエンジンを停止、ドライバーが交代して再スタートとなるのですが、重量的に有利な単気筒エンジンのマシンはここが鬼門です。4気筒エンジンに比べるとどうしても熱間始動性が劣るので、エンジンがかからずリタイアというのをこの5年間で随分見ています。観客としてもヒヤヒヤする場面です。

 このエンデュランス審査ですが、全てのチームが出場できるわけではありません。書類審査や車検が不合格では当然出走不可ですが、先立って行われたオートクロス審査での最速タイムに対しICVは1.33、EVは1.45を乗じたタイム以下でないと出走できないのです。

 オートクロスのベストタイムは、オーストリア グラーツ市のヨアネウム応用科学大学(U.A.S.Graz)の56秒309、2位の京都大学に1.2秒余りの差をつけた断トツタイムです。これに先の係数を乗ずるとICV:74秒891、EV:81秒648。これがカットラインに設定されるのです。

「天気さえよければ……」は通用しない

 私が客員教授として時折ゼミ形式の講義を行う静岡大学のチームメンバーにお会いしたので「動的審査の結果はどうでした?」と尋ねてみました。すると「オートクロスは無事完走したのですが、カットラインに引っ掛かっちゃいました……」と残念そうに答えてくれました。

静岡大学のマシン、「浜風」はスズキ「GSXR600」の4気筒エンジンを縦置きにミッドシップマウント
静岡大学のマシン、「浜風」はスズキ「GSXR600」の4気筒エンジンを縦置きにミッドシップマウント(クリックして拡大)

 静岡大学のオートクロスタイムを確認すると、76秒007。1.1秒ほど届かなかったのですが、実はこの日は台風の影響があり天候の変化が激しく、U.A.S.Grazの走行時はドライ路面、その後ゲリラ豪雨的な降雨がありエンジン始動に手間取った静岡大学が走る時にはウェット路面だったのです。もしドライだったら間違いなくカットラインをクリアしていたことでしょう。でもこれはモータースポーツ全般にいえること、仕方ないですね。

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