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「とにかくデータが巨大」「ケーブルが邪魔」――製造業VRの悩ましい課題を乗り越えよ!製造業VR開発最前線(後編)(5/5 ページ)

製造業VR開発最前線 後編では、実際の導入を検討するにあたっての具体的な事項や、今後の具体的な発展、製造業でのゲームエンジンの利用によるVR開発の広がりについて説明する。

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今後の製造業VR――3D CADデータ、CGのポリゴンVRからスキャン点群との複合VRへ

 日本の製造業の中でも、製造物の3D CADデータを持っているところはまだまだ多数派とはいえず、それが製造業を含まない一般産業全体となると、活用されている3D CADデータの割合はごくわずかです。一方で、CADが普及する以前に施工された建物など、その物品がある場所以外でVRを使って原寸で見たり、CADデータと組み合わせて検証したいと要望される物品はたくさんあります。物体をCADモデリングせずそのまま3D表示する方法が、全周レーザースキャナなどでの3Dスキャンによる点群データ化です。


全周レーザースキャナによる3Dスキャン点群(出典:PRONOSCANでできること

 点群のVR表示については、「3D&バーチャル リアリティ展(IVR)」のプロノハーツのブースでデモを公開しましたが、点群データは3D CADデータの10〜100倍以上のデータ容量になるため、VRで表示できるのは容量の比較的小さい一部のデータに限られます。本格的な利用については、さらに高性能なPCが一般化してからになるでしょう。


Oculus Rift DK2による点群VRの画面

 3Dスキャンした点群をそのまま見るだけでは用途は限られますが、点群の空間の中に3D CADデータを配置してVRで確認したり、逆に3D CADでモデリングした装置や建物の中に3Dスキャンした物体の点群を配置して検証したりという用途で真価を発揮します。そのため、今後の製造業VRはCADデータと点群の複合VRビュワーの方向に発展していくでしょう。


 前編、後編の2回に渡り、製造業VRのこれまでの流れと現状の課題、将来の方向性予測について述べてきました。普及価格帯の製造業VRはまだ登場したばかりで、要求される理論上の性能と、PCやHMDなど現状の構成装置やソフトウェアとの性能のギャップがまだまだ大きいです。ですが今、次々と登場する新製品によってユーザーの要望が具体化し、VRソリューションがそれを実現するために発展し、さらなるユーザー要望が具体化し……、という急速な発展サイクルに入っています。エンターテイメントVRとともに、これからが楽しみな分野だといえます。

Profile

早稲田 治慶(わせだ はるみち)

長野県岡谷市在住の3D設計者。日本で恐らく唯一の製造業VRエヴァンジェリスト。ローランド ディー.ジー.株式会社にて3D CADでの小型CNC切削加工機設計、CAM開発プログラミング、加工機の補正システム開発などの勤務経験を経て、2012年に株式会社プロノハーツに入社。ニコニコ超会議に出展した「ミクミク握手」、産業用3Dプリンタ、「いいね玉」の開発などの後、製造業VRシステムpronoDRのプロトタイプを開発。その後も製造業VRの新技術開発に従事し、CAM講習講師、鳥取県CMXプロジェクトでハイブリッド金属 3D プリンタLUMEXの運用を担った経歴も持つ。さまざまな方式の3Dスキャン技術にも通じ、吉本興業所属タレントのYouTubeチャンネル企画にも3Dスキャンで協力している



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