ロボット開発に学ぶ、モノづくりへのOSS活用ポイント(3/5 ページ)
モノづくりにおけるOSS(オープンソースソフトウェア)への関心は高まる一方ながら、上手に活用されている例は少ない。OSSによるロボティクス領域の形成と発展をサポートする東京 オープンソースロボティクス協会の取り組みを通じ、「モノづくりへのOSS活用ポイント」を探る。
OSS活用のポイント
次に、モノづくり企業におけるOSS活用にあたって、よく疑問点として挙げられる3つのポイントについて解説する。
- 1.コミュニティーの立ち上げ
まずは、コミュニティーの作り方だ。GoogleやFacebookのように常に開発者の注目を集めている企業でなければ必ず初めにぶつかる壁だ。自然発生的にコミュニティーが広がっていくことを期待せず、自ら仕掛け、地道に協力してくれる開発者を探していくことが重要となる。
TORKでは、クライアント企業向けハッカソンの開催や自ら主催するセミナーなどのイベントで告知を行っている。クラウドファンディングのキャンペーンや有名なコンペティションへの応募などを通じて、活動の知名度を上げる方法もある。TORKが支援したこともある月面探査用ローバーを開発するハクトでは、月面探査レース「Google LUNAR X PRIZE」に挑戦していたことにより、うまく人目につくことができた。
ポイントは自社製品に興味を持ってくれそうな開発者の集まるコミュニティーを探し、彼らの興味を引くやり方でアピールすることだ。「ブログ1本書いて終わり」ではなく、時間をかけてでも開発者の話を聞いてそれを反映し、また、製品や会社のビジョンを語ることが重要だ。また、開発者人口を考えると、海外の開発者の取り込みも行うべきだ。慣れるまでは大変かもしれないが、日本語だけしか用意しない、日本語から始める、という考えは捨てて、初めから世界を相手にしてみるのが良いだろう。
- 2.コミュニティーのマネジメント
次に、どうすれば一度興味を持ってくれた開発者を取り込み、自社製品開発のサイクルに組み入れることができるのか。日本企業でも最近はハッカソンやアイデアソンを開催することが増えているが、それが一時的な盛り上がりに終わらないためにはどうすればよいのか。
興味を持つ人の中にはいろいろな開発者がいる。ちょっと試してみただけという人もいれば、製品に感動してとことん貢献したいと思っている人もいるだろう。共通して喜ばれるのは、レスポンスを早くすることだ。それによって緊密なコミュニケーションをはかり、貢献意識の高い人の心をつかんでおくことが大切といえる。
OSSには数多くの開発者が関わっているが、コミュニティーに秩序をもたらし、活発に貢献してくれるのはほんの一握りだ。コアメンバーとなってくれそうな開発者を見極め、丁寧に対応することも重要となる。基本的にはやりとり全てが他の開発者にも公開されているため、コアメンバーとなる人の活動がその人の名誉となるよう真摯に対応し、時にはバッジやポジションを与えるなどして手厚く待遇するということも考えていいだろう。
偶然来てくれた人を捕まえるのみならず、コアメンバーになってくれそうな人を自ら探し出し、コミュニティーでの活動を依頼する、ということも必要だ。更に、こうした活動を通じて雇用に至る例も多くあるということを付言しておく。
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