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ロボットに興味がなかったPepperの開発者が新たにロボットを作る理由モノづくり×ベンチャー インタビュー(3/3 ページ)

ソフトバンクの感情認識ヒューマノイドロボット「Pepper」の開発をけん引したことで知られる林要氏。子どものころ「ロボットに興味がなかった」と話す林氏だが、Pepperだけでなく、ベンチャーを起業して新たなロボットを開発しようとしている。林氏は、なぜまたロボット開発に取り組んでいるのだろうか。

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米国から「日本はダメだ」と言い続けるような人間にはなりたくない

MONOist GROOVE Xを日本で起業しました。資金を調達しやすいシリコンバレーでの起業は検討しなかったのですか。

林氏 シリコンバレーで成功して、米国から「日本はダメだ」と言い続けるような人間にはなりたくありません。日本に貢献したいので日本で起業しました。ただし、インキュベーションのための資金調達については、日本だけにこだわっていません。最終的に、日本でのIPOもしくは友好的M&A(企業による買収)で日本発の新産業育成に貢献ができればいいと考えています。

 次回の資金調達は日本でやります。ただし次々回は、開発ではなく量産を見据えた段階に入るのでもっと規模が大きくなります。日本だけで資金調達ができるかどうかは分かりませんが、そうなることを期待しています。

MONOist 本社を、さまざまなスタートアップやベンチャーが集積するDMM.make AKIBAに構えました。DMM.make AKIBAで開発するメリットは何ですか。

林氏 最大のメリットは人脈でしょうか。新しいロボットを開発しようとすると、本来は100人いても足りません。とはいえ現在のGROOVE Xの社員は10人強で、外部協力者を含めても20人強に過ぎません。開発を進めて行くには、さらなる外部協力者やフリーランスのエンジニアの力が必要不可欠です。そのとき人脈があると、必要なところにリーチする時間が短くて済みます。

 DMM.make AKIBAの友達の友達の輪で何かつながるんです。例えば、現在進めているロボットの開発に必要な部品が調達できないということがありました。しかし、DMM.make AKIBAの掲示板に、このことを書き込んだら、たった30分で「ここに2個あるよ〜」という反応が返ってくるんです。

MONOist 最後に、GROOVE Xで開発しているロボットについて教えてください。

林氏 東京オリンピック・パラリンピックの前年、2019年の発売を目指して開発を進めています。現時点で具体的なことはいえないのですが、びっくりするくらい自然なロボットです。人がそばにいてほしいと思えるもので、Pepperと違うと言えば違うし同じと言えば同じですね。「使えない」という意味では同じかもしれません。

MONOist 「使えない」ロボットなんですか。

GROOVE Xのロボットは「私にとってのドラえもんを作るための第一歩なのかもしれません」
GROOVE Xのロボットは「私にとってのドラえもんを作るための第一歩なのかもしれません」

林氏 今、便利なモノにお金を払わなくなっています。しかし、便利じゃないけど心を豊かにするモノにはお金を払う。そういう意味で、われわれが開発中のロボットは便利じゃないので「使えない」ですが、自然であり、そばにいてほしいと思えるので、お金を払ってもらえるのではないかと思っています。

 子ども時代、ロボットにさほど興味はありませんでしたが、ドラえもんのような存在がそばにいたら、とは考えていました。われわれが開発しているロボットに四次元ポケットのような便利な機能はありませんが、そばにいてほしいと思えるという意味では、私にとってのドラえもんを作るための第一歩なのかもしれません。



 なお、2016年9月8日に東京都内で開催されるイベント「Autodesk University Japan 2016」の特別講演に林氏が登壇する。開発中のロボットのコンセプトなどを紹介する予定だ。

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