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3D設計推進者が考える、3D CADと学生の技術教育3D設計推進者の眼(13)(1/3 ページ)

機械メーカーで3次元CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回は3D CADと学生の技術教育に関する話題を取り上げる。

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 私自身、これまで、世の中のありとあらゆる3D CADを使用してきたわけではありません。また、使用している3D CADも、機能を完全に使いこなしているわけではありません。前回、3D CADにおけるデータフォーマットや異種データ間での受け渡しについてお話ししたのですが、読者の皆さんがどう受け止めてくれるのか心配していました。ただ思いの他、多くの方に関心を持っていただけたようでした。

 3D CADが販売される際、「自社のCADのカーネルはパラソリッドです」というように、操作機能以外の仕様について明確に説明されることはあまりありません。また、価格についても見積もりを取らないと分からないことが多いですね。そのようなテーマは、どちらかといえば、日々、3D CADを使っている人よりは、「CAD Admin」(CAD管理者)のように運用方法を考える立場の人たちに関わってくるものだと思います。

 データフォーマットなどの話題は、3D CADの使用者や管理者が集まるようなメーカーやベンダー主催の講演会で取り上げられることがありますが、3D CAD導入推進を始めたばかりの当時の私は、何だか“取っつきにくい”“理屈っぽい”話だと思っていました。私にとって、本当に聞きたい話は「3D CADをどう使っているのか」といったところだったからです。「カーネルなんて理解していなくても、3D CADは使えるよ」というように感じていたので、なんだか高尚な話に聞こえてならなかったのです。

 私もそのような情報に関心を持つようになったのは、ごく最近の話です。「操作が“軽快”、データが“軽い”」とうたわれていた3D CADをよく理解したかったことと、ヒストリーCADの情報をノンヒストリーCADに持ってくる手段を考える必要があったことが理由としてあります。

 3D CAD連携や、3D CADデータの管理、3D CADのバージョンアップ、場合によっては異なる3D CADへの移行などを考え推進していくのは、CAD Adminの方々の役割だったりします。中小企業では、設計者がそれらを兼務することがほとんどです。私自身も兼務でCAD Adminを担当してきました。その経験に基づいた話が、読者の皆さんの関心をひいたのかもしれません。

 CADや周辺アプリケーション、CADで用いるワークステーションなどのハードウェア情報、カンファレンスの情報などは、CAD Adminや情報システム部門は把握していても、実際に使用している設計者に届かないといったことは少なくはありません。ベンダーの担当者との窓口役は、CAD Adminや情報システム部門が担うことが多いからでしょう。今後、そのような、CAD利用者にとって少々やっかいだなと思われがちな話題も、皆さんと共有できればと思っています。

時間の制約の中、3D CADについてどう学ぶか

 最近、教育関係者の方々とお話する機会がありました。私自身も会社では就職活動中の学生さんたちと面談することもあり、新卒の社員を受け入れる立場でもあります。また個人的には工業高校で学ぶ家族がいるので、学校での3D CADの教育について、教育関係者の方々がどのように考えているのか関心がありました。ですので、大変有意義な機会でした。

 実は教育関係者の方々も、「3D設計推進者の眼」的な情報をとても欲しがっています。工業高校など、進学の他、就職する生徒も多い学校の職員の方々は、その就職先となる企業で「どのようなスキルを身に付けてくることを望んでいるのだろうか」「どのような設計環境にあるのか」といった現場事情について知りたいようです。教育関係の方々にとって、企業の人事担当とお話しする機会はあっても、私のような立場の者と話す機会はまれなことかもしれません。

 現在、多くの学校の設計教育の現場で、3D CADが使用されています。大学の理系学部や高専(高等専門学校)、工業高校、専門学校などが中心ですが、前回お話ししたような子ども向けのアプリケーションなどが今後普及すれば、広い意味での3D教育は、より低年齢層に向けた広がりを持つ可能性があるでしょう。

 一方で、高校や大学の教育では、3D CADを使いこなせるようになることを学ぶことそのものが教育の目的ではなく、設計や製造方法を学ぶ1つの道具として、また研究活動を行う上での道具として3D CADを学ぶ必要性があるという話を大学の教授より聞いたことがあります。

 今回の教育機関の方々とのお話でも、3D CADの学習時間について話題に上がりました。3D CADの特徴や操作を学んでいく上で、全ての学生が同じ理解度を持つわけではないため、限られた時間の中で画一的に教育するのは難しいという話が聞けました。

 学生さんたちは、限られた時間の中で、JIS製図(日本工業規格に基づいた製図)も学びながら、3D CADの操作を十分に習得する余裕はないとのこと。学生さんたちの中には、講義終了後に残って3D CADの操作を勉強したり、学生限定のアカデミーパッケージを購入して自宅で勉強している学生さんもいるということです。感心しますね。

 

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