すごく硬い金属でもおまかせ! 火花飛び交う放電加工の現場、見たことある?:ママさん設計者の「モノづくり放浪記」(4)(2/7 ページ)
ファブレスメーカーのママさん設計者が、機械系モノづくりの“生”現場を渡り歩き、ありとあらゆる加工の世界を分かりやすく解説していく連載。今回は放電加工を得意とする金型製作所のノムラを紹介する。
放電加工の電極
工場に入ってすぐの左手には、型彫り放電加工用の電極とその材料を整頓する棚があります。
放電加工用電極の多くは、JIS規格に基づいた純度99.96%以上の銅が使用されます。これは、電極には溶解しにくい材質が適していて、相手(加工物)が溶解しやすい材質であるほど電極の消耗率が小さくなり効率的な加工ができるからで、その点で熱伝導性に優れて溶解しにくい、純度の高い銅が用いられるようです。また、ノムラは金型製作が主力なので、必然的に加工物は鉄が多くなります。鉄は熱伝導性が悪く部分的な溶解を起こしやすいため、銅の電極と鉄の加工物の組合せは電極消耗率が小さく収まり、加工効率の面で最高に相性がよいのです。
消耗した電極は、不要な部分を切断して角形の材料にしてストックしておき、次の電極の材料として再利用します。それを繰り返して使える部分がなくなったら最後にスクラップとなります。
こちらが電極の数々です。
電極は、加工したい形状を“反転”した形状で作られます。そしてこれがどう働くかをひと言で説明すると「型押し」でしょうか。例えば、粘土の上にピンポン球を置いて上から押すと球面状のへこみが粘土に転写されますね。理屈はそれと同じで、放電加工の場合は押圧で転写するのではなく、加工物と電極の間に電圧をかけて火花を起こして、その熱の力で加工物に電極の形状を転写させます(「深く焼き付ける」と言えばイメージしやすいでしょうか)。従って、写真にある櫛刃(くしば)形の電極を使った時には、電極の凸部分が加工物では凹となり、電極の形状とは逆の櫛刃形を形成するのです。
こんな砲弾状の電極の場合は、加工物にテーパー穴が形成されます。
放電加工は、切削加工では困難な複雑で微細な形状でも加工出来るところも長所です。実際の加工の様子は、後ほどご紹介いたしますね。
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