Willow Garage出身デザイナーに学ぶ、サービスロボットのインタラクションデザイン(後編)(4/5 ページ)
ロボットが一般化するために「人間とどんな関係を築くか」は避けて通れない問題だ。正解はまだ見えないが、Willow Garage出身者が手掛けるロボットを通じて「今後のサービスロボットデザイン」を探ってみたい。
ロボットに判断を委ねさせないFetch Robotics(Freight & Fetch)
最後にDymesich氏のFetch Roboticsが手掛ける、倉庫での作業補助を行う自走式搬送ロボット「Freight」とその派生ロボットについて紹介する。
Fetch RoboticsではFreightを自走モバイルロボットのプラットフォームと位置付け、Freightの上に棚が搭載する「hmishelf」、カートを搭載する「cartdock」、センサーを取り付ける「datasurvey」といったアクセサリーを展開している。また、モバイルロボットの上にロボットアームを組み合わせたピッキングロボット「Fetch」も開発中だ。
このようなモバイルロボットのハードウェア群を管理するソフトウェア「fetchcore」を構築しており、顧客が自前の倉庫管理システムを使っている場合はそのインテグレーションも行っている。2016年5月にはSAPとの協業を発表し、SAPの拡張倉庫管理(EWM)ソリューションとの連携も可能になった。このように、物流倉庫の顧客のニーズに合わせた柔軟なソリューション提供を行っている。
現在、米国だけで600万人もの作業員が小売業の倉庫の中で働いており、その労働時間の50%が商品の移動に、また、25%が空のカートを戻すことに費やされているという。こうした状況に対し、モバイルロボットのプラットフォームを使って、倉庫内業務の自動化を進めようとしている。
Fetch Roboticsのロボットは、上記2社と違い、一般人とのインタラクションが発生しない倉庫内で使用される。そのため、デザインのポリシーはとにかくシンプルにすることである。タブレットなどのインタフェースから「後を追う」「充電ステーションに行く」「止まる」などの選択肢を選んで操作し、想定外のことが起これば作業を中断する、という設計になっている。
動きはシンプルで、「後を追う」であれば作業員の足を見て、適切な距離を保ちながら後を付いていく、障害物があればそれを避けるというようになっている。もし複数人の歩行が認識された場合は(もとの作業員を識別するというわけでもなく)単純に最も近くにいる人に付いていく。倉庫内では作業員同士が接近することは少なく、ロボットを盗もうという悪意を持った人もいないからだ。
ロボットが移動可能な空間の地図は、作業員がロボットを自ら操作して登録していく。地図への登録が不要な箇所は作業員側で選べばよく、ロボットに必要以上に情報を与えない、無駄なコンピューティングパワーを使わないという発想だ。
Freightが稼働中、もし事前に登録された地図と現状が異なる場合にはタスクを中断し、充電ドックに戻ることになっている。ロボットが一方的な判断を自ら行い、暴走することを防ぐためだ。
Amazon Picking Challengeで見られるように、自律ピッキングロボットを使って、ピッキング対象の微細な違いを識別するのは難しい(例えばコカコーラとペプシコーラの缶を見分ける、など)。Fetch Roboticsでは必要以上にロボットを賢くするのではなく、類似した商品は倉庫内の配置場所を変えるなど、ロボットの能力に合わせて環境側を変えることを推奨している。ロボットは不完全であるという前提に立ち、ロボットの判断に委ねることを極力減らすというアプローチになっている。
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