Willow Garage出身デザイナーに学ぶ、サービスロボットのインタラクションデザイン(前編)(2/4 ページ)
サービスロボットの機能による差別化が難しくなれば、次に浮上するのが人とロボットがどんな「関係性」を持てるかというインタラクションデザインだ。前編では、人とロボットの関係性「Human-Robot Interaction(HRI)」の重要性と、これまでの研究を振り返る。
サービスロボットのあるべき振る舞い
1つの方向性として古くから示されており、また、昨今のロボットに関わる法規制議論のベースになることが多いのは、Isaac Asimovの小説「I,Robot」で示されている「ロボット工学三原則」(「ロボット三原則」とも)だ。
- 第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
- 第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
- 第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
*2058年「ロボット工学ハンドブック」第56版 、『われはロボット』より(Wikipediaより)
つまり、原則として人に危害を与えないような、また、ロボットが人の命令に服従していることが分かるような振る舞い、インタラクション(「相互作用」や「対話」と訳される。人間とシステムの間のやりとり、すなわち操作や入力とそれに対する反応や出力の意味で用いられる)が望ましいとされる。
Teslaのオートパイロットによる事故の報道が相次いでいるが、完全自動運転(レベル4)の実現までの技術移行期においては、運転支援システムというロボットが人の命令をどの程度遂行できているか、逆に、どの部分は不完全で人の助けが必要なのかを周知していく必要があるだろう。
本稿の対象としている業務特化型サービスロボットではないが、PepperやJiboのような汎用型のコミュニケーションロボットについてもインタラクションデザインの重要性は言うまでもない。Jiboでチーフサイエンティストを務めているMIT Media Lab准教授のCynthia Breazeal氏が1990年代に作ったKismetというロボットは、人間らしいさまざまな感情表現が可能なHRIに対する試みとして有名だ。
Breazeal氏は、家庭用ロボットがまだ存在しない理由として「ロボットには人間のようなソーシャルなインタラクションが欠けているためだ」と指摘している。単に人に危害を与えないだけではなく、人に良い印象を与え、人とロボットの間により良い関係を築いていくことが重要だという主張だ。
以上のような背景から、ロボットのインタラクションデザインは、今後ロボットが社会に受け入れられていくかどうかを決める重要な要素と位置付けられる。また、冒頭に述べたよう、会社単体の視点では、従来のロボット技術による差別化が困難になりつつあるなかで、新たな差別化要素としてもこのインタラクションの良しあしが顧客獲得と継続につながっていくと考えられる。
なお、ロボットを人に危害を加えない存在にするためには、ロボットのコンセプトや外観のデザインに加え、それをどうやって設計実装するかという観点もまた重要だ。取得の義務はないが、2014年に発行された日本発の生活支援ロボットの安全性に関する国際規格「ISO 13482」は1つのガイドラインとして有効だろう。
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