“バケツリレー”によるマニュアルづくりから脱却するための手法とは:製造業ドキュメンテーションの課題(2)(4/4 ページ)
マニュアルとは、各部門の知的成果の集積であるとともに市場接点でもある。しかしマニュアルづくりは、部門間でのドキュメントの“バケツリレー”と、属人的なすり合わせで行われているのが現状だ。連載第2回では、そういった現状から脱却するための「ダイナミック・ドキュメンテーション」について紹介する。
品質と業務効率の両立
注意警告文や工具情報といった専門的な情報をマニュアルに掲載する際、制作者は担当部門からの資料を漁ったり、担当者に直接聞いたりする手間が必要だった。一方、担当部門では正しくマニュアルに掲載されているかどうかレビューする手間が必要だった。
ダイナミック・ドキュメンテーションによってそうした双方の手間が大幅に削減された。各部門で持つ情報がデータリソースとして共有され、ジクソーパズルのピースをはめ込むように、各ドキュメントにはめ込まれる。ドキュメントのバケツリレーではなく、データリソースとドキュメントを一元的に扱うことで、部門コンカレントにドキュメント制作できるようになったのである。
大切なことは、他部門の情報をマニュアルに組み込む際に、DITAの「コンテンツ参照(conkeyref)」のしくみを使っていることである。これによってオリジナルの情報が改訂された際、マニュアルに組み込まれた内容も追随して自動的に改訂されるのだ。改訂作業に人手がまったく介在しないことによって更新漏れや変更ミスはなくなり、したがってチェック作業もしなくてすむ。品質と業務効率が両立できるわけである。
最後に
マニュアルは企業と市場(顧客)との接触点である。少し大げさに言うと、企業はマニュアルを通じてその知的営為の全貌を市場にさらしているのだ。したがってマニュアルは常に品質を問われている。一方で販路の多国籍化にともないマニュアルの多言語化とコストダウンが求められている。品質と生産性は本来アンビバレントな関係だが、どちらも企業競争力を左右する差し迫った課題なのだ。今回提示したDITAによるダイナミック・ドキュメンテーションは、このアンビバレントな希求を実現するひとつのヒントになると思う。
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